AJC(全国学習塾協同組合)森貞孝理事長の最新教育情報 第66回
教育国債を柱にした教育無償化を実現したい
年明け早々から、岸田総理の「異次元の少子化対策」発言が飛び出し、各党からも次々にこれに対応して議論が集中している。
その中で教育国債を発行すべきだという議論が、立憲民主、国民民主、日本維新などの党から次々に飛び出した。
岸田内閣の予算の目玉は、安全保障と少子化対策で、昨年ロシアのウクライナ侵攻で安全保障のための予算が2%まで増額することをほぼ臨時国会終了後に決まったも同然の話になった。核を持った大国が有無を言わせず侵攻して、ミサイルを浴びせる強引なやり方、そして一方的に自国の領土宣言をすることに世界中が反対してもどんどん進めていく。この有様を見て、日米安保があるからと安心して見ていられなくなった政府は、反撃のための攻撃容認・防衛力増強に急遽舵を取らざるを得なくなった。共産党を除く野党もほぼ肯定的な発言が多く、防衛力増強に向けての様々なニュースが飛び交った。
もう一つの少子化対策は、今年4月からはこども家庭庁が発足し、そこにすべてを任せるような話が先行していたが、12月に入って、昨年の出生数が70万人台に落ちることが確定的になって、新年早々からの「異次元の少子化対策」の話が、財源問題と合わせて大きなテーマになってきた。
その中で、増税でなく国債を発行すべきだという意見が次々に出てきたのだ。少子化対策、教育国債についてこのような発言が出てきたことについて、触れてみたい。
昨年1月、超党派で「教育立国推進協議会」が設立された。会長に下村自民党元政調会長が就任し、最高顧問に自民安倍元総理・公明山口代表・立憲民主野田元総理、さらには立憲民主の泉代表・国民民主玉木代表・日本維新馬場共同代表など約180人の国会議員が参加した。民間からは100名弱の有識者が参加し、テーマごとに6つの分科会に分かれて討論を重ねた。
そこでの大きなテーマが教育の無償化であった。少子高齢化で高齢者の年金や医療費に多くの国家予算がかかり、とても教育の無償化に回す予算はない状況の中で、教育国債が議論された。フランスのサルコジ国債の例などが紹介され、教育国債を教育の無償化の財源として活用したいという意向が強く示された。
OECD 諸国の公財政教育支出は2021年時点GDP比で平均5・6%、日本は機関補助と個人補助を合わせて3・8%で、データの存在する加盟国の中では最下位だった。
私は第一分科会に入って「大学までの教育の無償化」について話し合った(幹事・佐々木成基学園代表)。昨年6月にまとめた分科会の内容の一部を紹介する。
教育国債による無償化は次世代技術革新による国民一人当たりGDP世界一に資する教育制度を担保することが条件。そして既存教育予算5兆円の再検討、規制緩和・教育バウチャー制度で個別最適化された教育の実施、ふるさと納税の学校法人適用など様々に改善。そして日本の実質GDP550兆円(2019年)から計算してOECD平均4・45%並みにするにはあと約7兆円、最大支出の7・75%並みにするにはあと25兆円の教育予算を出せる計算だ。今年もさらに議論が進められる。少子高齢化の議論の中で教育国債を柱にした教育の無償化をぜひ実現したい。