AJC(全国学習塾協同組合)森貞孝理事長の最新教育情報 第68回
学校の教師不足に、ベテランの塾講師を充てるなどの工夫を
昨年の出生数は過去最低の79万人台となり、1年前の4月号で危惧したように80万人を割った。岸田内閣は異次元の少子化対策を実施すると言っているが、言葉ほど実行している政策に迫力がなく、各地の地方議員選挙と国会議員の補欠選挙に自民党の圧倒的な強さが全く感じられない。
コロナウイルス感染症はどんどん収束に向かいつつあるようだ。3月13日からマスクの着用について緩和され、5月の連休明けからは、二類から五類に変更になることも決まっている。感染症は完全に収束はしていないものの、再びの感染拡大を慎重に予防しながら、経済を活性化させる方向へ、世界中で努力を始めている。
日本でも、昨年10月から始めた全国旅行支援は旅行社に政府が補助をすることによって観光業・旅行業・交通機関・飲食店などの活性化を図る目的だったが、年が明けて1月からの追加の旅行支援には国民はもう熱が冷めてしまっている。補助金額が少なくなったことも大きな要因だが、2月から3月まで伸びて、一部は4月も補助金が余っている場合、延長される見通しだ。航空業界は落ち込みの回復を狙って、全日空が2月28日と3月1日に4月と5月の国内の全便に距離に関係なく7000円の特別運賃を売り出した。行き先によっては通常運賃の4分の1以下にもなる金額だ。初日の売り出し直後は、瞬間にアクセスが殺到して、つながらない状態が続いたが、2日目になると、例えば羽田発の午前中の便は満席が多いものの、午後の便や帰りの便はほぼ希望通り選べる状態だった。日本航空も3月9日から4月と5月の全便、12日から6月の全便を同様距離に関係なく6600円で売り出した。正月休みやお盆の時だけ満席になる状況を変えていくための試みだ。LCCの各社もスーパーセールで乗客の獲得競争をしている。
外食大手のダイナミクスが3月末に破産手続きをした。コロナ禍の中での100億円を超える最大の負債になった。
物価も上がり始めて1年を超えた。あらゆるものが一斉に上がっているが、食用油のように2倍を超えたものもある。電気やガスのようなインフラの値上げも庶民の懐を痛めつけている。
景気は好転する前が一番厳しい、とよく言われる。昨年の5月頃、コロナ感染症の軽症化が言われ始めた頃から、毎月の物価の値上がりや企業の人員カット、ファストフードの店舗の縮小などが話題になり始めた。
学習塾は、消費者の懐が厳しくなると経営に大きく響く。追い打ちをかけてパイがどんどん小さくなってきた。体力のない小規模の塾は持ちこたえるのは難しいだろう。一方で、就職活動の学生が減って学校の先生のなり手が足りなくなり始めた。教員採用試験の倍率が下がり始めて1倍ちょっと。何カ所か掛け持ちで受けている学生も多いので、欲しい人数が確保できない県も出てきている。大都市圏の学校では、若いうちは都会で働いて、歳をとったら田舎へ戻って親の面倒を見たり、家業を継いだりしたらどうかと言って教員集めをしているようだ。パイが小さくなってきて、経営が苦しい塾があって、一方教師不足で困っている学校があるのなら、過渡的に教員免許がない経験豊富な塾の講師を当てはめるなどの工夫ができないものか。もったいないと思うことが多い今日この頃だ。