AJC(全国学習塾協同組合)森貞孝理事長の最新教育情報 第69回
官と協力して子どもたちの指導を
IT分野の激しい変化が各産業にDXの導入の形でなだれ込んでいる。なだれ込んでいるという表現が適切だと思われるほどすべてを押し流していくのではないかと思っている。
最近ChatCPTという言葉をよく耳にするようになった。単語や文章を入れると即座にそれに対応する文章をたたき出してくる。1分間に数百字もの言葉が画面上に出てくるのだ。意味や歴史や関連する語彙など信じられない速さで画面上に作り出す。論文や学校の宿題なんでもこしらえる。
こんな素晴らしい文章を君が書いたの?と聞いたら、コンピューターが書いてくれましたという嘘のような本当の話が始まっている。
2045年には、AIなどの技術が人間の知能を上回る時が来る、それをシンギュラリティ(技術的特異点)と言って、今ある多くの職業がコンピューターにとって代わられるようになると言われている。
世界中が今AI技術にしのぎを削っている。新しい時代は20年後ではなくて、5年後にはものすごい変化にさらされるのではないかと思っている。
そんな怒涛の中で日本は翻弄され飲み込まれそうな危うい状況に見える。
先進諸国の中で日本はIT関連の技術者が少ない。大きく出遅れている。GAFAと言われる世界の巨大産業がIT技術革新に莫大な投資をして激しい戦いをしているのに、日本の中堅企業はおそるおそるクラウドコンピューティングに手を付けてみようという段階だ。中小企業は新しい学びよりも日々の仕事や人手不足でそれどころではない。もっと言えば、アメリカなどでは能力の度合いによって給与が変わるジョブ型雇用が普通なのに、日本では年功序列で歳をとってIT関連技術を理解していない人が上に立って経営に参加している企業がまだ多い。富士通や資生堂のような企業でも最近雇用形態が変わってき始めた段階だ。
もともと日本人は大学を出て社会人になってから学ぶという意識がほとんどない。OECD諸国の中でも最も低いと言われている。企業も今までは新しい技術を積極的に吸収することは一部の人材に任せて消極的だった。このまま10年手をつかねて動かなければ、インドや中国にも後れを取ることになりはしないか。
中小企業で経理を担当している仕事場にソフトが入り、営業に在庫管理のソフトが入り、運送関係にもソフトが入ってきたら、クラウドコンピューティングで、全部を関連させて、原材料の発注、商品の生産、製品の在庫管理、経理まで一つにまとめて、効率化を図るのは当然のこと。その段階でそれぞれの業務に携わってきた社員がDXの導入にあたって学びの機会を持ち、技術を身につければ、そのままその部署でさらなる高度な内容の職務を続けることが出来る。そのために今政府は補助金を準備して各企業に呼びかける努力をしている。
教育立国を標榜してきた日本が、少子化で人口急減対策に腐心し、ITの急速な進歩が各産業のDX導入が始まって、今国はG7の一員という誇りを維持していくためにしっかりした舵取りを迫られている。
学習塾の業界も、民間の教育機関として官と協力して子どもたちの指導に、未来の日本のプラスになる教育のあり方を模索すべき時ではないか。