AJC(全国学習塾協同組合)森貞孝理事長の最新教育情報 第71回
AIによる大津波が世界を飲み込もうとしている
グーグルのAI、Bardが5月11日から日本語版が動き始めた。半年ちょっとでなんと生成型AIが、NPOのオープンAI社のChatGPT、マイクロソフト社のBingとあわせて三つ目になった。マイクロソフト社は巨額の資金を提供してChatGPTの共同出資社になるとともに、それを活用しながら独自にBingというさらに進んだAIの開発に成功した。この連合体に対して、遅ればせながらグーグルがBardを発表し、Amazon他も追随しようとしているのだ。まさかこのようなAIが突然発表され、無料で利用できるとは正直信じられない気持ちだ。初めのChatGPTは、いきなり素晴らしい速度で、作成した文章や調べた結果が打ち出されてびっくりしたが、Bingからは速さにも慣れ、断然使い勝手がよくなり、これはいいなと思うようになった。
考えてみれば大量のビッグデータがあるので、質問の内容をビッグデータに調べに行き、引き出した知識を上手に文章に作り上げるという作業だからコンピュータの精度と速さが増せば何秒かで回答が作成されるだろうと想像はつくが、それにしてもとうとうこういう時代が来たかという感がある。もう一つあちらのデータとこちらのデータから作り出される文章がなるほどこう考えられるかと感心したり、自分が知らないデータがいくつかあったりして、そんなことだったんだと初めて知ったことも出てくるので、一日に何億回というアクセスがあるのも無理はないと思っている。
さてこの三つの生成AIを比べてみると、初めに出たChatGPTは質問した内容からビッグデータに飛んで文章作成するのだが、質問の仕方に工夫がいることと作成された文章のエビデンスがわからない。それに比べて、マイクロソフト社のBingは生成された文章に出典を追いかけられるように小文字で番号を振って、元データがチェックできることと、質問内容に類似した論文やデータを多数表示してくれる。初めて使ったときには、質問内容に対する答えよりも、なるほどこんな良いデータが存在したのかという面でありがたかった。さらに質問がおおざっぱであっても対話形式で20回質問が繰り返せるので、その段階で徐々に詳しくより適切な要求を加えていくことで、望んでいる文章が生成されてくる。そして生成される文章も独創的、厳密に、バランスよくというように表現がいろいろ変えられるようになっている。
グーグル社のBardとの違いは、ChatGPTとBingが英語・日本語など6つの言語に対応しているのに対し、30もの言語に対応。2021年に発表されたLaMDAという大規模言語モデルをベースに開発。グーグルの強力で正確な検索機能を活用して、Chat・Microsoft連合に懸命に追いつこうとしている。
今テレビではChatGPTが毎日のように喧伝されている。グーグル社は遅れていることを認めつつも、Chat・Microsoftグループにいろいろな角度から独自の優位性を持とうとし努力している。
これからの一年は、生成AIが遅ればせながらさらにいくつか発表され、三年後までには業界によっては一気に消えてしまうような激しい変化が起こるのではないか。
AIによる大津波が世界を、産業界を一気に飲みこもうとしているように見える。