第12回 オレコサミット
2030年に向けて学習塾がいま解決すべき課題
2023年7月2日(日)株式会社スタディラボ(地福武史代表取締役社長、東京都)が主催する「第12回 オレコサミット」が、ビジョンセンター八重洲で開催された。少子化が加速し、生成AIが教育やビジネスに浸透しつつある今、塾業界に新たな価値を生み出すためには、どのような施策が必要か?
民間教育に携わってきたプロフェッショナルたちがこれからの教育のあり方を考えた。
日本における英語教育とその必要性
株式会社市進ホールディングス 代表取締役会長 下屋 俊裕 氏
英語を使うネイティブの人たちは3.8億人です。ビジネスなどで実用英語として使う人たちはインド人やフィリピン人やナイジェリア人やドイツ人など11.2億人です。つまり、実用レベルで英語を使う人たちは世界で15億人いるわけです。さらにインドやフィリピンの人口は増えていますから、これから先、英語は使う必要性がこれまで以上に拡大していくと思います。
その英語の習得については、様々な仮説が立てられています。第二言語をネイティブ並みに習得することが可能な年齢は12歳までとするドイツの言語学者による有名な仮説があり、そのため英語に早くから慣れ親しむことへのニーズが生まれています。
また、東北大学大学院国際文化研究科の鄭教授の研究によると、英語を習得するには一方的にスピーチをするよりも、相手と対話する双方向のコニュニケーションの方が脳の活性化を促すそうです。また、鄭教授は不安が大きいと脳の活動が低下すると述べています。英語を話すことの不安感を除去することが必要なのです。
早期からOLECOでオンライン英会話を学ぶことは、こうした不安感を払拭することにも有効であるといえます。タブレットという限られた画面の中で、まわりの人を気にしたり、間違えたりすることを恐れずに双方向でマンツーマンの英会話を楽しむことができるからです。外国人とのコミュニケーションに年少時から慣れ親しむという点でも効果的です。
さらにスタディラボさんは課題を生徒宅の学習専用プリンターに印刷したカタチで届けるサービス「StudyOne」を開始しました。デジタルと紙の融合です。プリントした紙のテストなどにオンライン授業を見ながら答えを書き込み、その紙をスキャンして提出します。私は手を動かして紙に書く学習によって効果が増大すると考えています。書くことによって記憶が定着するからです。しかも、書いた英文を口に出して読めば、目や耳にも記憶が残ります。
この塾と家庭をつなぐサービスによって、自宅学習の可能性も大きく拡がるでしょう。通塾日以外の学習時間も自宅で確保できます。「近くに塾がない」「コロナが心配」といった問題も解消できるのです。
こうしたサービスを早くから活用して英語に触れさせることが、日本の将来にも大きく役立つことだと私は確信しています。
2030年に向けて学習塾がいま解決すべき課題
― 生成AIの進化とオンラインサービスの未来
株式会社スタディラボ 代表取締役 地福 武史 氏
私は2021年5月の講演で2030年の教育現場の未来は「『分散型』で『個人に合わせてカスタマイズ』できる『スピード感のある学習環境』が重要になる」と述べました。
この10年でAI技術は飛躍的な進歩を遂げ、この未来が現実のものとなろうとしています。生成AIのGPTシリーズは、その最良の例です。では、生成AIが今後、教育分野でどのように活用されていくのでしょうか?
まず、生成AIが個別の学習プランを作成するので、パーソナライズ学習が進化します。そして、学習コンテンツを自動で作成するため、自学自習をサポートします。教師の負担を軽減して時間の節約に寄与するのです。また、生徒同士や講師との協力的な学習活動もサポートします。さらには教育データを分析したり洞察したりするため、指導システムの改善に役立ちます。
では、この生成AIから離れて、オンライン英会話がなぜ重要なのかをお話ししたいと思います。最も重要なことは、人間関係を築く能力が育まれることです。教える先生は人であり、しかも毎回変わります。先生によって少し発音が違うこともありますが、綺麗なものから得られる力が必ずしも実用性があると限らないと私は思っています。
自宅や学習塾からリアルタイムで英会話を習える点も重要です。時間と場所の制約を受けずに済むからです。オンライン英会話を通して異文化理解や国際交流の場を提供できることも利点です。学習塾においては、受験に向けて学習生産性とともに、労働生産性、経済合理性も向上させています。去年から今年にかけてオンライン英会話を導入いただく塾が急増し、現地のスタッフの補充に追われるほどです。
このオンライン英会話が生成AIによって、将来、どのように変わっていくかをお話しします。生成AIが生徒の学習履歴や進捗を分析し、適切な教材や学習プランをカスタマイズします。また、講師だけでなく、生成AIが生徒の発音をリアルタイムに評価して、指導をサポートします。そして生徒が生成AIを相手に授業の復習としてリアルな対話の練習をして自信を高めることもできるのです。文法や表現の誤りもリアルタイムで検出し、適切な修正を提案してくれます。さらに外国人講師の指導力も向上させます。生徒の学習データを分析して、個別の弱点や課題を特定するからです。
こうした生成AIの進化とともに、弊社は学習者の可能性を最大限に引き出すためのサービスを提供し続けていきます。
大航海時代の始まり
株式会社スタディラボ 取締役 横田 保美 氏
2015年から2022年にかけて、対前年出生率は過去最低となっています。小学生の激減は2027年から、中学生の激減は2030年から、高校生の減少は2033年から始まります。子どもが消えるのです。学校も消えています。2019年には小学校が76%に、中学校が91%に減少しました。大学も2040年には30%が消えます。学校だけでなく、塾も消えます。「今年の春は、高校生の募集が悪かった」という声が全国の塾から数多く聞こえてきます。そして、X年後に塾の市場が80%に縮小すると予想されているのです。塾のない街とともに、塾に通えない子どもも急増します。
では、X年後とはいつなのでしょうか?出生率の現状から考えて2030年から2033年の間、つまり遅くても10年以内と予想されます。残念ですが、この少子化を止める手立てはありません。これまで塾の繁栄を支えてきた市場環境は終わりを迎えたのです。
しかし、このような状況をただ眺めているだけでよいのでしょうか?確かに私たちには逆風が吹いています。しかし、無風になれば、私たちは大きな海に漕ぎ出すチャンスを失ってしまいます。今が最後のチャンスなのかもしれません。私たちには過去という旧大陸から未来という新大陸へ船出することが求められているのです。
ChatGPTがもたらすのは、働き方が変わる未来です。働き方が変われば、学ぶ目的も変わります。例えば英語を学ぶ目的は「受験に有利なため」ではなく「様々な可能性を持つため」へと変わります。今後、OLECOは武器になるのです。
塾が最も苦手としてきた労働生産性と学習生産性を向上させるためにも、ITは大いに役立ちます。そこで、目を向けるべきは家庭という「新大陸」です。塾はこれまで生徒を志望校に合格させようと努力を重ねてきました。そのために長時間授業と高い月謝が必要だったのです。しかし、家庭で学習させるなら通塾負担がなくなります。指導時間を減らして学習成果を伸ばせます。ですから「Study One」も強力な武器になります。これからは、デジタルとアナログのベストマッチングが塾の個性となる時代です。荒海を越えて新大陸を目指すための武器はITのほかにありません。今起きているデジタル革命の中で教育も進化しています。塾の舵をとるキャプテンとして進むべき針路を示し、逆風に向かって出帆しようではありませんか。
英語の実社会における活用能力を図る〝アセスメント〟
教育開発出版株式会社 代表取締役社長 糸井 幸男 氏
弊社はスタディラボさんと連携して、OLECOのオンライン英会話のためのデジタル教材の制作をさせていただいています。その開発コンセプトは「入試や定期検査のためだけでなく、実社会で活用できる英語のコミュニケーション能力や学力を育むための教育を実現したい!」という現場の先生方からの声を反映したものです。
そこで、私は都内の公立中学校の3年生全員に向けて実施されたスピーキングテスト「ESAT-J」と大学入学共通テストの英語を分析してみました。
「ESAT-J」は2022年からスタートしました。テストは4つのPartに分かれています。PartAは、英文の音読です。意味や内容が伝わる正確な発音と適切な流暢さで音読する力が求められています。PartBでは情報処理能力が、PartCでは日常的な出来事について話の流れを踏まえて相手に伝わるように状況を説明する力が問われています。PartDでは、身近なテーマに関して聞いたことについて、自分の意見とその意見を支える理由を伝える力が求められています。
「ESAT-J」に関する東京都教育委員会のホームページを見ると「英語力アップのためのアドバイス」の一例として「身近な話題や社会的な話題について、相手と意見交換ができる」と記載されています。
一方、大学入学共通テストでは、情報処理能力や思考力に合わせて様々な力が求められ始めています。2022年のリーディングの問題では、大学生活用の家電を購入するという内容の問題で、情報処理能力だけでなく、身近なテーマについて考える力が問われています。もう一つのリーディング問題では、地球資源や環境問題といった社会問題がテーマになっています。2023年のリーディングテストには、地球最強の生物として話題になったことがあるクマムシを題材とした出題がありました。
このように英語の試験では、日常的な出来事や身近なテーマを題材にして英語の知識や情報処理能力を問う出題がされています。つまり、入試や定期試験が実社会で通用する英語力のアセスメントになっているのです。
オンライン英会話はこうした入試や定期試験で出題される英語と実社会で通用する英語のかけはしになる教材です。そこで、私はオンライン英会話が英語学習指導のスタンダードになるのではないかと確信しています。
■オンライン英会話 【導入事例のご紹介】■
株式会社うすい
うすい学園
私が営業担当として導入いただいた「うすい学園」は群馬県を中心に展開している学習塾です。2021年4月から11教室で4年生以上の小学生を対象にOLECOを導入しました。昨年からは中学生に向けた自宅での受講を開始しています。塾として生徒や保護者の方々の満足度を高めるために何ができるのかを考え、これまでの伝統的な英語の学習から一歩進んでコミュニケーションの部分を強めたいという思いをお持ちでした。また、OLECOによって生徒がさらに主体的に授業に取り組めるという点にも期待を寄せていただきました。
現在、うすい学園様ではOLECOを活用した「ツーウェイ英語」の授業を小4から小6に向けて行っています。第1週は日本人の講師がテキストを使って文法や英単語を学ばせます。英語の基本的なルールをここで身につけるのです。第2週は第1週で習った英語を使って、外国人講師とオンラインでコミュニケーションします。
生徒からは「中学で習う英語が小学生にまで降りてきて難しくなってきていますが、外国人の先生と楽しく話せるので安心です」という声が寄せられているそうです。
株式会社Q
個別指導塾Q 代表取締役 笠木 誠 氏
当塾がOLECOを導入したのは2017年の春でした。現在は90分の「小4・5・6英語コース」に取り入れています。年長から高3までを対象にした英会話中心の40分のコースも用意しています。
OLECOの魅力はただの英会話のレッスンではないことです。小学校のうちから、中1の英文法のテキストを使い、be動詞や一般動詞について基礎から教えた上で、講師の先生がオンラインで英会話のレッスンをしてくれます。当塾では日本人講師による文法指導を行った後、OLECOのレッスンに入ります。インプットしたことをOLECOでアウトプットして、自分の英語が外国人に通じるかを試すことができるのです。「中学校に入った時に英語を超得意科目にすること」をめざして生徒が意欲的に学んでいます。
OLECOの最も大きな特色は、先生が生徒の上達や成功を、力いっぱい褒めてくれることです。これによって生徒の学習意欲がますます向上しています。OLECOで学び始めてから半年ほど経つと生徒の発音が変わってきます。たとえば、小5から入塾した男子生徒がタブレットに向かって先生と話しているのを私が聞いたところ、ネイティブのような発音をしていて感動しました。
■スタディラボ今後の展望■
株式会社スタディラボ 上席執行役員 峰嶋 聡子 氏
株式会社プロジェクトリーズ/リード進学塾 専務取締役 石田 栄治 氏
峰嶋 弊社の配信拠点の1つであるフィリピンではコロナも落ち着き、渡航制限も解除されてきておりますので、お客様による現地視察を再開しております。今回は、その第1弾ということでお客様を代表しまして、リード進学塾の石田専務にご訪問いただきましたので、その感想などご紹介していただければと思います。
石田 私が地福社長やSRJの堀川社長とともに初めてフィリピンを訪れたのが2019年です。そして今回が2度目の訪問となりました。ビルの最上階の全フロアにOLECOのフィリピン人講師の先生方がオンライン英会話をするブースがあるのを見て驚きました。講師の先生方は20代が多く、礼儀が行き届き、元気に挨拶してくださいました。
また、クオリティーコントロールチームを拝見させていただきました。講師の方々を採用して育成するまでを一貫して行うチームです。質の高い英会話レッスンを日本にいる学習塾で英語を学ぶ生徒に届けるために、これだけのことを現地の方々がしてくださることに感銘を受けました。
峰嶋 ありがとうございます。弊社は今後の展開として、さらなる品質向上に向けた取り組みを行っています。石田専務からお話のあったクオリティーコントロールチームによる日本の教育事情に合わせた講師の研修プログラムはそのひとつです。
また、低学年指導を充実させるため、ゲームをしながら英会話が楽しめる「Talk and Play!」をリリースする予定です。低学年のお子様たちのモチベーションを高めていくために、オレコネコというキャラクターのごほうびシールも制作中です。
高校生向けレッスンの拡充も図り、英検対策や国公立大学の自由英作文対策などレベルや目的に合わせたカリキュラム案を作成しました。
4月にリリースされた「StudyOne」のプロモーション動画も完成しています。さらに「ワンパス」をご利用のお客様に限り、月額利用料なしで入退室管理システムの「マモルパス」をお使いいだだくこともできるようになりました。今後も皆様のニーズにお応えしたサービスを提供してまいりますので、よろしくお願いいたします。