AJC(全国学習塾協同組合)森貞孝理事長の最新教育情報 第75回
少子化のひずみが出始めている今、塾はどうする?
政府が懸命に努力しても着実に少子化が進む。その影響があちこちに出始めている。
プラスの影響は、保育園にある。数年前までは保育園に入れなくて大騒ぎをしていた。待機児童の数が各地で話題になり、保育園に入れない場合、親が仕事に就くことができずに収入の道が断たれたケースも多く国会でも野党が政府に迫ったりした。
ところが地方自治体が保育園を積極的に増やし待機児童が減って、ここ数年で出生数も急減したため、空きが生じるケースが出始めた。
本年4月からスタートしたこども家庭庁は新たに「こども誰でも通園制度(仮称)」をスタートさせることにし、9月から試験的に31の市区町村の50の施設でモデルケースとして始めた。6カ月から3歳未満の子どもであれば、親が勤めに出ていなくとも週に数時間保育園に預けることができる。1回が1000円程度で、生活保護家庭や非課税世帯は無料だという。育児の経験のない親がストレスで苦しんだり、1日中傍にいることで神経がまいってしまうケースも多いことから、週に1回か2回解放される時間を持ったり、その時に保育園に相談したりできることで育児にゆとりが生まれるという発想からで、大変好評のようだ。
マイナスの面では、NHKがニュースで報じたところによると、現在全国で1000万戸の空き家が発生しているという。地方の限界集落だけでなく、大都会でも空き家が増え続けている。NHKスペシャルでは東京の世田谷区で現在5万戸の空き家が存在するといった衝撃的な内容の報道がなされた。高齢者が増えた関係で公団住宅の5階でエレベーターがない部屋はよほど交通至便のところでない限り、買い手や借り手がないという。いつまでもただ管理費だけ支払い続けていくわけにはいかないので、無料で手放していることも、高齢者の1人住まいのケースで亡くなったあと、放置される場合もあるようだ。
不動産会社はそのような空き家を二束三文で引き取る話が増え始めている。
私が具体的に積算したところによると、15年前に子どもを産む最も可能性の高い年齢層(21歳から32歳までの男女の人口の合計)が1861万人であったものが、昨年で集計してみると1419万人に減少している。
15年でおよそ450万人、1年ごとに30万人ずつ減少している計算になる。子どもを産んでも育てるのが大変だ。今でさえぎりぎりの生活をしているのにと躊躇する夫婦や、仕事に生きがいを見つけて出産をためらったり、結婚することで今の生活を変えたりしたくないといった様々な考えもある。
ただ、現在生まれてきている子どもたちの数は100万人を切ってから7年経ち、この7年間で出生数が23%急減している。過去の15年間の比ではない。
このように具体的に少子化のひずみが出始めている。幼児、児童、生徒を対象としている業界は今後どのように生きていけばいいのか。激しい生き残りの戦いや、業務内容の転換が必要かもしれない。
少子化以外でも、電気自動車や生成AIなど新しい時代の波にもまれ始めている。
今までの世の中の動きとは問題にならない激動の真っただ中に放り出されて、どのような未来へたどり着くのだろうか。