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校長サミット
「NextGIGAを見据えた授業づくりと未来の学校像」

2023-11-01
[左から] 高橋 純 先生(東京学芸大学)、戸ヶ﨑 勤 先生(戸田市教育委員会 教育長)、奈須 正裕 先生(上智大学)、竹内 孝太朗 氏(モノグサ株式会社CEO)

[左から] 高橋 純 先生(東京学芸大学)、
戸ヶ﨑 勤 先生(戸田市教育委員会 教育長)、
奈須 正裕 先生(上智大学)、
竹内 孝太朗 氏(モノグサ株式会社CEO)

2023年9月3日(日)、株式会社教育開発研究所(福山孝弘代表、東京都文京区)とモノグサ株式会社(竹内 孝太朗代表取締役CEO、畔柳圭佑代表取締役CTO、東京都千代田区)は、全国各地の校長先生と共にNextGIGAに向けた学校経営についての共催イベントを都内で開催した。
当日は、有識者による講演とトークセッションが繰り広げられ、最先端の知見を共有する充実したサミットとなった。

「NextGIGAに向けた戸田市の教育改革」戸ヶ﨑 勤 先生(戸田市教育委員会 教育長)
数学の教員、戸田市の小中学校の校長、同市や埼玉県の指導主事などを経て2015年から同市教育長。産官学民との連携を中心とした教育改革を進める

学校教育に携わって今年で45年目になります。かつての戸田市は、小中学校ともに学力、体力、非行問題行動、不登校などの課題山積。戸田市の小中学校を希望する教職員がほとんどおらず、管理者不足のため市外から補充するほどでした。
現在、戸田市の教育学力は県内トップクラス、体力は全国平均を超え、非行問題はほとんどありません。市の小中学校を希望する教職員が急増し、管理職搭載者数も県内トップクラス。快適なLAN環境を実現しICTをマストアイテム化した授業により、子どもが主語の学びへ。市内18学校が先進校であり、視察対象校です。
教育改革が成功したのは、AIで代替できない能力の育成とAIを活用できる能力を育成することを主眼に産官学と連携し、知のリソースを積極的に活用したのが大きかったです。経験と勘と気合い(3K)から客観的な根拠へ船出、現場にあるものを尊重し、授業や生徒指導等を科学することに注力しました。
当面の取り組みの方向性は、授業を科学する、生徒指導を科学する、学級・学校経営を科学すること。例えば、生徒の悩みや不安SOS(アラート)をデータで出す取り組みを、デジタル庁やこども家庭庁の力を借りながら進めています。
学習指導要領が変わる際、社会に開かれた教育課程というキーワードがあり、現場と教育委員会が、変化する社会の動きを教室の中にいれていこうと、共有化を図ってきました。学びの中で未来を感じられる学校にしていこう、『凡庸な90点の取り組みより、60点でも夢のある挑戦を』と、現場が変わっていったのです。『教える』から『信じて寄り添う教育へ』。戸田市SEEPプロジェクトでは、誰一人取り残さない。それぞれの子どもたちがそれぞれの課題をもっていることを先生たちが認識するために新たなマインドで取り組んでいます。

「子ども一人一人の学びの質を高める授業づくり」高橋 純 先生(東京学芸大学)
東京学芸大学教育学部教授。富山大学人間発達科学部准教授等を経て現職。中央教育審議会、文部科学省等の委員を歴任。
第17回日本教育工学会研究奨励賞受賞。日本教育工学協会会長、日本教育工学会理事など

我々はつい知っていることを子どもに教えたがるのですが、子どもには我々が登ったことのない未知の山でかつ高い山に登ってもらいたい。
すでに知っている山は、ゴールが見えているし登り方もわかっている。ワークシートを用意して一番効率的なやり方はどれでしょうと見通しを持って学ぶやり方ですね。未知の山はどうか。コロナで体験したように、計画が立たない、見通しが立たないとき人は一番得意な方法を使う。人に聞くのが得意な人は人に聞き、調べる。未知の山の登り方は得意を生かす、創意工夫。知っている山は苦手克服。いつでも知っている山を登らせるだけではダメなのです。
中央教育審議会デジタル学習基盤特別委員会で語られているのは、学習基盤というデジタルをどう扱うか、世界観が重要です。 
非連続的に劇的に変わるSociety5.0、VUCAの時代、デジタライゼーションというより、いきなりDXにいかないとうまくいかないのではないか。
学習指導要領では、何を知っているか(コンテンツベース)から、何ができるようになるのか(コンピテンシーベース)へ。実際に行動ができるようになるには、学び続けないといけない。その基礎的素養を学校でしっかり身につける。つまり学び方を指導するということです。
コンテンツベースでは、記憶・再生がゴール→テストだった。教える→一斉に教える(インプット)のみもよくある授業形態、単線化です。コンピテンシーベースでは、記憶・再生はもちろん、実際に行動できるのがゴール。やってみながら習得する。アウトプットしながらインプット。そうなっていくと子ども一人一人が行動する、自分でアウトプットする→複線化していく、武器はICTです。教え方、授業づくりにおいて生徒一人ひとりを主語にした、授業観やICT活用観の転換、新しいICTの使い方が必要です。

「令和の日本型教育とこれからの授業づくり」奈須 正裕 先生(上智大学)
上智大学総合人間科学部教育学科教授。神奈川大学助教授、国立教育研究所教育方法研究室長、立教大学教授などを経て2005年より現職。新学習指導要領の策定に関わり著書も多数

令和の日本型学校教育の構築を目指して~すべての子供たちの可能性を引き出す個別最適な学びと協働的な学びの実現~(答申)が出ました。現行指導要領を遂行するための条件整備が必要となってきたわけです。改訂作業の途中でもいろいろな変化があり、指導要領だけではうまくいかないだろうということでやってきたわけです。
自立した学習者、これが令和の答申。自分の学びを自分で考え自分で進められるように、先生がいなくても学べるように、今しっかり教えることが大切です。
100年前に世界各地で誕生した個別最適な学びの源流、大事なことはすべての子どもは幸せになる権利を有していることを確認すること。北欧の教育は社会福祉だと言っています。その子らしく学ぶ権利、基本的人権としての発達権、学習権は人権保障なんです。一人ひとりが、子どもが納得するところまで考えられるようにしようではありませんか。
教室における子どもの多様性は高まっています。子どもがうまく学べないのは子どもの側に問題があるのではなく、カリキュラムや学習環境の側に問題=改革の余地があると考えるべき。Universal Design for Learningという発想、もっとできることがあります。
子どもは学ぼうとしているし、学ぶ力を持っている。教える教育から環境を整える教育へ。過去は、口頭による教師の一方的な伝達。現在のパラダイムは、相互作用です。教師は、情報の伝達者およびゲートキーパーであり、知識データベース等に生徒も教師も等しくアクセスしながら協働的に学んでいきます。
生成AIが話題になっていますが、拡大した選択肢をどう使うか、子ども観の転換と授業のパラダイムシフトが大事。子どもは有能な学び手であり、適切な環境と出会えば自ら進んで学びます。教師の仕事は学習環境整備と足場かけ。徹底した情報開示、見取りと支援です。

「NextGIGA環境におけるAIと教員の役割」竹内 孝太朗 氏(モノグサ株式会社CEO)
2010年株式会社リクルートに入社。2013年から「スタディサプリ」にて高校向けサービスの立ち上げに従事。2016年に畔柳(CTO)とモノグサ株式会社を共同創業。

学習の過程には、理解・定着・活用の3段階があると思います。理解は、新たな概念がわかること。新たな概念を理解しても、定着していないと成績は上がらない。発展的な問題、場面自体は初見でも、自分が持っている素材をきちんと使えるのが活用。活用までできれば定期テストでは点が取れます。
塾の現場は、基礎的な理解は習得している前提で、真の理解をしてほしいというのが先生の目的です。私なりの理解ですと、例えば割り算でいえば、いい説明をしたから問題が解けるようになるということはあまりなくて、割り算の仕組みを理解し、納得して使える状態が定着していると言えます。深い定着ってなんなのだろうと考えたとき『これってこんなことにも使えるんだ』というバリエーションが身に付くことなのだと思います。基礎的な理解・定着・活用、その活用のレパートリーが増えた結果、深い定着が起こる、その結果深い理解に到達するから活用に至るのではないか。
活用シーンでは初見の難しい問題でも試行錯誤的であるべきだし、答えのない探究的な学びでも試行錯誤的であるべき。そのためには発問が重要であると考えます。発問は、質問とは違って思考や推論を誘発する問いかけであり、先生方が得意とされる「場づくり」のひとつです。
入試学力的なものでは、多くの生徒は一定水準まで到達しない。なぜそんな問題が起きるのかというと、前提の状態が個人個人で違うからです。九九が身についてない子に割り算を教えるのは難しい。そこが個別最適化のポイントだと思います。前提の知識事項をまず補充する必要があります。
弊社は「定着」こそテクノロジーが担う領域だと思っており、記憶定着の学習プラットフォーム『Monoxer』を提供しています。記憶定着を個別最適化するまでお手伝いができると思います。

登壇者トークセッション「未来の学校像・学校づくり」(敬称略)

高橋 ここまでの感想などをお聞かせください。
竹内 保護者様、塾様と接点をもつことが多く、入試学力にこだわってる方が多い中、現場はこんなにも多様なんだなと、入試というものをどうとらえるか考えてました。
奈須 大学入試はかなり変わってきましたよね。上智はAO入試で入学する生徒が多い。高校までどんな勉強をしてきて上智に来てどんな勉強をしたいのか。今何を考えていてどんな計画があるのかまで言えるのが大事。大学によっては集団討論をさせたり、実習をさせるところもある。求められる学力の質が変わってきているんです。共通テストも変わり、いろいろと変わりどころ。そのあたりをどう狙いどう鍛えるか。
戸ケ崎 知識・理解の上に応用・発展がある。数学はPBLで自分事として社会課題を解決していく。あたりまえに楽しく、スパイラルで繰り返し学ぶことによって理解も深まることもある。個別最適な学びを自分自身がコントロールできる子どもに育てないといけない。
竹内 数学もPBLでうまくやれるか。PBLはあらゆるものに相性がいいのか。シーンがあるのか、どうなんでしょう?
奈須 社会にあるものごとを数理的に読み解いていく流れと常に数学的に実現された問題を発展統合的に深めていく、二つある。PBLはいろいろなアプローチがあるが、生活文脈に近づけていくというのがオーセンティック。文化遺産とか学問の本質、学問の営みそのものに近づけるのもオーセンティックなんですよ。本物の実践に学校の学びの文脈を近づける。どっちも補足したい。教科を本当の教科に戻すことが大事です。
戸ケ崎 校長先生方、カリキュラムマネジメントをしっかりされていますかという話なんです。校長先生の特権を生かしていただきたい。
奈須 私は日本の子どもをもっと堂々とさせたい。堂々とできる考え、主張を持たせたい。もっと学校でやることを減らしましょうよ。先生方にぜひやっていただきたいのは、現在使っている教科書と他社の全教科教科書を並べて、全教科書に載っていることには○載ってないのは×をつけていく。そうすると、すっ飛ばせるところがわかります。附属の学校は2学期には全教科を終え、3学期は余裕です。教科書を使いこなせることが自由になることです。
戸ケ崎 校長先生は、教科管理・予算を自由にできるんです。産官学連携も自在にでき、予算も獲得できます。やれることはまだまだあります。ぜひ校長職を楽しんでいただきたい。
高橋 まずは教科書比較からですね。


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