全日本私塾教育ネットワーク 主催
塾人・塾の先生のための「新しい視点で学ぶ日本の歴史」
塾人・塾の先生のみならず新たな学びの歴史講座
私塾ネットの理事長・田中宏道氏は、講師を務める教育学者の藤岡信勝氏を次のように紹介する。
「私たちのご先祖様や父母、兄姉の世代の方々が何を考え、何を悩み、どう結論を出したのか、すべてがつながるように歴史を語ってくださいます。歴史を教える上で、生徒さんたちの心に響くものを学び取っていただけると確信しています」
「新しい教科書をつくる会」副会長を務める藤岡氏は、
「長年教科書づくりに取り組んできた私なりに考えてきたことをお話したいと思います」と話す。
小・中学生から高校生向けまで、幅広い歴史の捉え方を教示する講座だ。途中回からの参加も受け付けており、来年度以降も11講座が予定され、全20回で旧石器文化から日本の未来を語る内容まで一連の構成となっている。
東京・大井町の会場のほか、オンラインでの受講も可能だ。一括申し込みまたは1回ごとの申し込みも受け付けており、後日でも学べるようにアーカイブ配信も行う。
「教養として学ぶ機会でもあり、一人でも多くの方に本講座の素晴らしさを知っていただきたい」という田中氏の想いから、塾業界以外の方にも広く門戸が開かれている。
【第1回】日本の旧石器文化と縄文文化
「動物オリンピックを開催します。ヒトが動物に勝てない種目は?ヒトにしかできない種目は?」
「約3億年前、爬虫類(恐竜)全盛の時代、霊長類はどこに居場所を発見した?」
講座の冒頭、藤岡氏はこんな問いを聴講者に投げかける。人類の進化について教科書の内容よりもさらに前の話題であり、そのまま授業で語れば、生徒たちをグッと惹きつけるトピックが満載だ。
明治初年に始まった日本の考古学の通説は、「日本の歴史は縄文時代から始まり、旧石器時代は日本にはなかった」であった。しかし、これを覆した考古研究家・相沢忠洋氏と岩宿遺跡の発見について藤岡氏は話を進める。
「この発見によって、日本の歴史が数万年遡ることになりました。旧石器時代の遺跡は1949年に1つ目が発見され、いまでは遺跡数は1万4500にものぼります。日本列島のような小さなエリアでこれだけの遺跡が見つかったのは、世界で断トツトップです。旧石器時代は日本が非常に発達していたと言っても過言ではありません」
また、藤岡氏はいわゆる「縄文文明論」について次のように語る。
「煮炊きに使う縄文土器は定住を示します。煮炊き文化によって生活が安定して豊かになり、定住生活が人々の絆を深くしていったに違いありません。
『場所愛(ギリシャ語/トポフィリア)』という言葉の起源は、実は縄文土器にありました。つまり、最も早く定住生活を始めたのは、実は日本です。豊かな自然の中で、略奪する必要もなく支え合いながら生き、自由な時間の中で和の文化を育んだ、それが日本の歴史です。
ですから、農耕革命よりも『定住革命』の方が、人間の在り方にとってより重要であると主張すべきです。実際、昨今はこの『定住革命』に世界中の学者が関心を持っています」
【第2回】稲作と『ムラからクニへ』の発展
「戦後のパラダイムの中で、『日本は世界から遅れた国だ』という強烈な〝思い込み〟は、まさに負の遺産です。この〝思い込み〟を最も的確かつ具体的に揺さぶったのが考古学の発展です」と藤岡氏は語る。さらに教科書の記述では、稲作の伝来は『紀元前3世紀頃、朝鮮半島より伝わった』だが、これはほとんど間違いだと指摘する。
「福岡県の板付遺跡で縄文土器が出土する同じ地層から水田遺構が発見され、さらに佐賀県唐津市の菜畑遺跡から縄文土器とともに灌漑施設を伴う水田の遺構が発見されたことが決定的でした。
『神話から始まる日本の歴史をやめることは論外。考古学から始まる歴史は日本が戦後押し付けられたもの』という観念が一般的かもしれませんが、結果的には考古学の発展こそが歴史の見方を根源的にひっくり返したのです」
さらに、2003年には国立歴史民俗博物館が「弥生時代の始まりが従来考えられてきた紀元前5~4世紀ではなく、約500年遡った紀元前10~9世紀である可能性がある」と発表した。そして、その後の年代研究の結果、縄文・弥生時代の年代観が大きく変わりつつある。
「歴史の研究は変化による大胆な違いを強調しがちですが、境界線は徐々に曖昧になっていきます。いわゆる〝断絶説〟は学説の初期段階で、やがて〝連続説〟が定着します。
縄文土器・弥生土器の区別も時代区分の指標ではなく、縄文時代から弥生時代の連続性が重視されるようになりました。縄文人・弥生人と区別する言葉がいまだに残っているのは問題だと思います」
神話から生物学、鉱物学に至るまで幅広い知識による藤岡氏の講座は、日本人としてのアイデンティティや自己肯定感を育み、日本が好きになるような歴史講座だといえるだろう。
■講座内容■
第1回 6月1日(木)
日本の旧石器文化と縄文文化
第2回 7月6日(木)
稲作と「ムラからクニへ」の発展
第3回 9月7日(木)
神話が語る国の始まり
第4回 10月5日(木)
大和朝廷と東アジア
第5回 11月2日(木)
日本文明の方向づけをした聖徳太子
第6回 12月7日(木)
大化の改新から律令国家の成立まで
第7回 1月11日(木)
日本の律令国家とその変容
第8回 2月1日(木)
元寇を撃退した鎌倉武士
第9回 3月7日(木)
室町幕府と南北朝の争乱
【日時】開催中~2024年3月7日(木)
<全9回>
毎月第1木曜日(1月は第2木曜日)
午前10時30分~12時30分
※終了後30分程度交流会(参加任意)
【参加形式】
会場またはオンライン(Zoom)。
アーカイブ配信あり
【会場】
いぶき学院(東京・大井町)
〒240-0014 品川区大井1‐23‐4 OVAL ビル8階
【参加費用】
1名1講座2,000円
※一括申し込み15,000円( 税込)
【お申込み方法】
各回3日前の月曜までに下記のいずれかから
お申し込み。
●私塾ネットサイト:https://shijuku.net/
●メール:lapis@proof.ocn.ne.jp