AJC(全国学習塾協同組合)森貞孝理事長の最新教育情報 第80回
未来に向けて、一歩先んじてものを考えては?
前線が日本付近に停滞して、季節外れの雨が続いている。菜種梅雨というにはひと月以上早いし、逆にスキー場のある地方は雪不足で悲鳴を上げている異常気象だ。
令和元年に経済産業省がダイバーシティ2.0を発表して、昨年から今年にかけてセミナーなど積極的に関心を呼ぶ動きを行っている。ミレニアム世代といわれる出生数急減の世代が、2030年には出産適齢期に入り、2030年の崖といわれる出生数のさらなる急減が始まる。そして2035年には出生数は50万人を切ると言われている。令和元年にそのようなことが言われたが、現実は令和5年にはその予測を大幅に上回った状況になっているのだ。
ダイバーシティ2.0で経済産業省が言いたいことをまとめてみよう。
日本の多くの企業は、男性が経営陣の中心を占めている。しかし今後の経営にはグローバルな人材獲得力の強化が必要だ。ミレニアム世代の人材は就職先を選定する際に企業の多様性や受容性の方針を重要視しており、特に女性はこの傾向が顕著である。
企業におけるダイバーシティ(多様化)経営のイメージは、柔軟な働き方の実施が圧倒的に多いが、女性比率の目標の設定にはほとんど取り組みがなく今後もっと注力すべきだと考える。
成長戦略として多様な人材がその能力を最大限発揮し競争力を高めていくことが不可欠で、令和元年度は新ダイバーシティ経営企業100選の中から18社を表彰した。
また平成24年度から経産省と東京証券取引所が共同で実施した「なでしこ銘柄」は「女性活躍推進」に優れた企業を投資家に紹介している。令和元年度は東証3600社のうち、なでしこ銘柄46社、準なでしこ銘柄19社であった。また女性起業家等支援ネットワーク構築補助金事業等も行っており、例えば近畿・四国では公益財団法人大阪産業局が地域補助事業者となっている。
以上経済産業省のダイバーシティ2.0について述べてきたが、ダイバーシティ(多様化)が今大きなテーマになっているが、経産省は人材の多様化に徹底して焦点を当て今後の人口急減期に企業の成長については対策を立てるべきだとの姿勢のようだ。
学習塾も生徒指導に数多くの女性講師が活躍している。学校でも小学校のような低学年の指導者は女性が圧倒的に多い。
これからの経営には、女性だけでなく多年経験を積んだ高齢者の知識を借りたり、近年急速に増えつつある外国人労働者の中で、教育に力のある語学指導者やICTなどに深い知識のある指導者など役に立つ人材が多数存在するのではないか。
日本で働いている外国人で、日本語をもっと身につけたいとか、家族で日本に来ていて子どもたちに日本語だけでなくしっかりした学力をつけて、いい大学へ進学させたいと考えている方も増えてきている。
私たちがダイバーシティという言葉で考えるのは、現在している仕事の中で視点を変えて別のやり方や方法で効率の高い経営を模索するケースが多いが、経産省は人材に絞って激しい少子化の荒波を乗り切って経営を伸ばしていこうという観点からダイバーシティを捉えている。
大きな時代の流れの中で、塾の経営も未来に向けて一歩先んじてものを考える必要があるのではないか。大きな課題が目先にあるように思う。