(株)POPERオンラインセミナー
継続率UP・新規入塾生獲得につながる保護者会の作り方
学習塾経営アドバイザー 大澤一 氏
2002年、関西の大手塾に入社。個別指導部責任者を経て2009年、取締役に就任。コーチングをベースにした教授法、保護者面談、マネジメントを自ら実践すると同時に社内研修を担う。子どものやる気を引き出す親の関わり方を中心にPTA主催の講演会の講師を務める。児童・生徒が主体的に学ぶための教師の関わり、アクティブラーニング型授業の実践をテーマにした指導者研修を全国の学校・学習塾で展開。
「『教える』をなめらかに」をミッションに掲げ、教育事業者等のバックオフィスのアナログ的な業務をデジタル化(DX)することで効率化を図り、SaaS(Software as a Service)型業務管理プラットフォーム「Comiru」をはじめ多彩なサービス展開で知られる株式会社POPER(東原慎吾社長、東京都中央区)。同社では、教育の様々な課題や動向にフォーカスし、現場の最前線で活躍中のゲストを招いてオンラインセミナーを開催している。
今回は、昨年12月に開催された学習塾経営アドバイザー 大澤 一通氏の講演内容をご紹介する。
<Part1>
保護者会を開催するメリット
今回のテーマは保護者会についてです。継続率をUPし新規入塾生の獲得も一緒に行える保護者会を作っていきたいと思います。面談は各塾の皆様、年に3回ほどされていると思いますから「面談をやっているから保護者会はいいよね」というお話もあるかと思いますし、コロナ禍のため人が集まる機会を避けていらっしゃったと思います。ぜひ保護者会にチャレンジしていただきたいと思います。
面談は大事ですし、特に個別指導の塾様は生徒一人ひとりの課題を解決するという意味での面談は意義がありますが、直近の課題を解決することに話が終始する傾向にあります。保護者会につきましては、主催者側が設定できるということもあり、塾側が伝えたい内容を話せる、保護者同士がつながりを作れるというメリットがあります。保護者会は、時期やターゲットでどのような内容にするかを決めることが大事。ちょっと先のこと、未来のことや自塾の理念や実績をアピールすることができるのです。地元の公立高校に進学を考えている新中1生(現5、6年生)は、勉強の仕方に不安を抱いていることも多く、その不安の解消が必要です。新中3生は、いよいよ受験生になるわけですから、その保護者に向けて受験への向き合い方、進路選択と最新の入試情報、高校入試に向けた勉強の仕方などについて話します。また、夏休みには子どもたちは家にいる時間が長くなりますので、夏前に小学生の保護者を集めて、夏休みに気持ちよく過ごせるよう環境を整えていくのもタイムリーだと思います。秋から冬にかけて、いよいよ中3生にとって受験本番。その際には、直近の入試のことを話すだけでなく、高校進学後、大学入試の動向、将来に向けての話をするなど、シリーズ化して保護者会を開くことをお勧めします。
塾と保護者が接点をつくる場所として保護者会を活用
保護者会は、ターゲットを絞って、その人たちが知りたい情報を提供するため、保護者の皆さんがいろいろなことに気づける場です。そして保護者同士がコミュニケーションを取り合うということが非常に重要になってきます。参加型にすることで「知り合いを連れていきたくなる保護者会」にするのです。
具体的に、私は以下のようなワークショップをしました。
「次の項目(収入・家族・健康・学歴・友人・人間力・趣味)のうち、我が子が将来幸せな人生を送るために必要だと思う順に1~7の順位をつけてください」と書かれたシートをお配りしました。
「それから5人くらいのグループになって、各チームで自分のつけた順位を見せ合いながら上位3つを話し合って選んでください」
大変盛り上がりました。学歴を上位3に選んでいるチームはありませんでした。
実際に書き出してみると学歴より重要と思っていることがたくさんある。友人に恵まれてほしいからこの子の性格に合った大学が選べるくらいには勉強してほしいという〝気づき〟が得られるのです。保護者同士のコミュニケーションもとれるという効果もあります。
保護者会だからできるコミュニティの形成
塾の存在意義というものを先生方は考えていらっしゃると思います。忙しいお母さん方は子育てについて考える時間も、振り返る時間もなかなか取れず、考えを共有する仲間ともなかなか会えません。塾を通して「子育て」についての悩みや将来への不安について話せる仲間ができ、保護者会などで定期的に話せる機会ができたら塾は地域で特別な存在になれます。
<Part2>
保護者会開催事例
春日井個別指導学院
吉永 塾長 渡邊 教室長(以下、敬称略)
春日井個別指導学院は、愛知県春日井市にある小中高の個別指導塾。私立大学入試の総合型選抜に特化したコースがあり、高3生が毎年30~40名集まり95%が合格。生徒数は2教室で約70人、集客はSNSのみ。創業9年目で初めて保護者会を主催。
〈ゲスト講師〉大澤一通 氏
外部会場をレンタル
[当日の流れ]
〈タイトル〉
「令和時代の保護者が知っておきたい受験情報」
事前にアンケートをとり、ワークショップで保護者同士の意見交換を行う参加型にした。
●受験生が本気で力を発揮できる言葉がけとは(60分)
*事前アンケートで生徒に調査した「保護者に言われていやだった一言」を発表
*ワークを実施。保護者同士での意見交換の時間も設置。
●大学入試を見据えた受験勉強、進路(60分)
[開催までの流れ]
• 実施3カ月前に大澤氏に講演依頼、場所を設定
• 10月にオンラインで打ち合わせ (子どもたちに詳細アンケートをとる)
• Comiruで1カ月前から保護者に告知、面談でも告知、1週間前にYoutubeで告知
• 塾生へはComiruのお知らせ機能で告知。アンケート機能を使用して出欠確認
• 吉永塾長が外部生へも案内を実施
■トークセッション
大澤 今回保護者会をやろうとしたきっかけを教えてください。
吉永 お世話になっている先生から「中3の継続率を上げるには保護者会をした方がいいよ」とアドバイスをいただいたからです。
大澤 今回のゴールはどこに置いていましたか?
吉永 中3の高校継続率です。意識づけをしたかったのです。また、保護者の方が集まる機会を提供し、世の中が大きく変わっていることを伝えたいと思いました。
大澤 実際に保護者会をやってみていかがでしたか?
渡邊 内気だと思っていた生徒が、楽しそうに話していて、いつもと違う表情が見られて新鮮でした。
吉永 集客の段階では不安もありましたが、保護者も盛り上がっていたし、気づきが変わったのがわかりました。保護者会の翌週に個別懇談をしたのですが、「高校に入っても勉強しないといけないんですよね」と態度が変わったんです。
大澤 継続率は上がりそうですか?
吉永 かなり感触がいいです。目標は50%、頑張れば手が届くかな。格段に上がると確信してます。
渡邊 高校に行っても勉強するのが当たり前という空気感をいかにつくるか。生徒さんも一緒に参加したのはすごくよかった。帰り道や家の中でも話が弾んだと思います。
大澤 今後の保護者会でどんなことをやっていきたいですか?
渡邊 新中1生が多いので、定期テスト対策や通知表のシステムについて理解を深めたいです。
吉永 今回、保護者会×SNSの可能性をすごく感じました。ターゲットを決めて外部への告知から入会までの流れを突き詰めていきたいです。