SRJオンラインセミナー 2つの手段で備える・考える
新課程・共通テスト「情報Ⅰ」
株式会社SRJ(堀川直人代表取締役社長、東京都中央区)は、2024年6月19日(水)、学習塾やスクール関係者を対象に、オンラインセミナー「2つの手段で備える・考える 新課程・共通テスト『情報Ⅰ』」を開催した。「情報Ⅰ」は、新課程の大学入学共通テストで出題されるほか、現代社会において重要性を増している分野だ。セミナーでは、エデュケーショナル・デザインの水島滉大氏と、SRJコンテンツ事業部の安田哲部長が対話形式で講演。「情報Ⅰ」に関する基礎知識や2025年度の大学入学共通テストへの対応、低学年から身に付けたい力についても言及した。概要を紹介する。
エデュケーショナル・デザイン株式会社
水島滉大 氏
エデュケーショナル・デザイン株式会社は、IT・プログラミンング教育の重要性が叫ばれる以前の2014 年より、ゲームを題材にしたエンタメ性のある独自教材の開発・制作・提供を実施。全国および海外で200教室以上にプログラミング教材の提供とオンラインコースの展開・運営、小中高のIT授業のサポートを行っている。水島氏は、ゲーマー、プログラマー、教育者の3方向から子どもたちが楽しく学べるプログラミング教材の開発を行っている。
株式会社SRJ コンテンツ事業部
部長 安田哲 氏
株式会社SRJは、社会で活躍できる人づくりを実現すべく、自立学習型能力開発プラットフォーム「TERRACE」を開発・提供。ゲーミフィケーションの要素を取り入れ、楽しく継続できる工夫と仕組みが盛り込まれており、現在全国47都道府県・累計5500教室で利用いただいている。安田氏は、言語に関する幅広い知識を有し、約20年間にわたり首都圏大手進学塾の現場の最前線で指導。
科目に関する基礎知識 背景と最新情報
水島 プログラミング教育は、2020年から小学校必修化、2022年に高校「情報Ⅰ」必修化、大学入試への「情報Ⅰ」新設決定で、学校でもIT領域を学習する機会が増加。一般のご家庭でもプログラミング教育への関心はさらに高まることが予測されます。小学校で必修化されたとはいえ、国語、図工、家庭科、音楽などでプログラミングの要素を入れるという授業で進んでいます。高校では「情報Ⅰ」という共通科目が追加され、すべての高校生が学ぶことになりました。2025年から新たに共通テストに教科「情報」が加わり、国立大の95%以上で必修化とされています。
司会 私立大学では概ね選択科目に加えられると思いますが、早稲田、明治などで「情報Ⅰ」の選択が可能とか。東京理科大では国語と「情報Ⅰ」が選択だそうですね。
安田 東京理科大の共通テスト利用入試を調べてみると、経営学部では理科・地歴公民・情報の3つから1つを選ぶ選択制で、複数受けた場合は高い方の得点が採用されます。4科目から選べる学部もあり、学校・学部によって実に様々。8科目1000点満点だと「情報Ⅰ」は100点満点なのでそのまま使えば10%。配点、選択科目としても学校により扱われ方が異なるので、受験生と合格戦略を立てる必要があると思います。水島 「情報」は高1で学ぶことが多いため、受験まで2年間もあります。「情報」を使わない生徒もいますし、範囲も広いので学校側も対策をたてづらい面はあるかもしれません。
「情報Ⅰ」で学ぶこと、「備える」要素とは?
司会 どのような内容が出題されるのでしょうか。
水島 「情報Ⅰ」では共通テストで大きく4分類の出題がされます。
(1)情報社会の問題解決
情報の特長、知的財産権、情報リテラシー、情報セキュリティ、最新の情報技術など
(2)コミュニケーションと情報デザイン
デジタル単位の計算、効果的な情報の伝え方(わかりやすいプレゼンテーション、Webページ)など
(3)コンピュータとプログラミング
コンピュータの仕組み、プログラミング、モデル化とシミュレーションなど
(4)情報通信ネットワークとデータの活用
通信技術、情報システム、データの読み方、データ分析の手法など
司会 高校生や受験生になる以前、低学年ではどんな取り組みをしたらいいでしょうか。
安田 試作問題を見ると、一見難しいのですが、それぞれの意味を読み解いていけば、情報Ⅰの知識に若干不安があっても、時間はかかるものの、なんとか解くことは可能です。論理回路(and/or/not)に関する問題や「鉄道の路線図」と「満足度評価ランキング」の整理・分類方法を答える問題、二次元コードの生成を題材に復元能力とデータ量に関する出題など、速く正確に読み解く力を培えば比較的易しいです。
今後の見通しについて考える
司会 今後の見通しについてお聞かせください。
安田 言うまでもありませんが、高大接続改革という背景があり、知識・技能を習得し、その上に思考力・判断力・表現力を育む姿勢が大事。「幅広い知識をもとにあなたはどうしますか?」と入試問題でも問われています。
小中学生の「全国学力・学習状況調査」の出題をもとに、知識と活用の比率を考えると、旧指導要領では(平成29、30年度平均)知識69.5%活用30.5%。現行指導要領では(令和4、5年度平均)知識55.5%活用45.5%。「情報Ⅰ」の「試作問題」では読解対「情報Ⅰ」=53%対47%。知識を活用し、思考して応用し、いかに表現するかが問われています。
司会 保護者の方への訴求で心がけることは?
水島 ひとつには、21世紀情報社会・創造社会で生き抜く力をつけていくための機会を提供しています、AIを正確に活用するために論理的に考える力をつけていきますと訴求すること。失敗しても繰り返し挑戦できますし、受験での力や社会に出て役立つ力が身につきます。一方、根源的な親心へのアプローチも大事。親は子どもに得意なこと、好きなことを作ってあげたいと思っています。プログラミングは、自己表現できる最高のツールであり、自己肯定感も上がります。学びはあるが、遊びのように気づいたら成長している、そういう指導を心がけています。
安田 今年の共通テストが終わったとき、英語の問題で「難しい問題があった」と話題になりました。センター試験から共通テストになり、分量も増加して難しくなっていますが、国語で求められるような読解の要素が英語でも求められ始めているのだろうと考えています。保護者の方が受験した20年前は約3000語だったリーディングの出題が、今年は約6300語と倍増以上。読み取れるのは当たり前で、どう運用するかがポイント。このような問題を乗り切れると、将来、英語で小説を読めたり、映画が理解できたり、面白くなってくるはずです。新しいものを学ぶのは本来楽しい。プログラミングを通して「あれ?何がいけないんだっけ?これかな?」とPDCAサイクルが身についていく。思考力を伸ばすためには、試行錯誤できる試行力が必要。考える時間をあえて大人が提供しなければいけないのです。
水島 先生の言いなりになって、写しているだけでは受験も社会も乗り越えられない。自分で考え答えを出さないといけません。
情報の科学的な見方・考え方に日頃からどんどんトライさせてみよう
安田 公立高校入試でも頻出になった「箱ひげ図」のほか、小中学校でも統計に関するものは学習しています。「ふ~ん、そうなんだ」で終わらせず、身の回りにあふれる様々な数値をもとにして、「平均値を出してみよう」とか「中央値は何かな」とトライさせてあげるのも必要。子どもたちが興味を持ったとき、やりたいなと思ったときに出してあげられるよう、現場で準備をして整えておくことを意識していただければと思います。
司会 今回は切り口が「情報Ⅰ」でしたが、高校生、受験生だけでなく、小中学生がどう学び、どういう手段で力をつけていくのかが教室の個性になっていくように思います。保護者とお話しするきっかけにもなれば嬉しいです。本日はありがとうございました。