全国学習塾協同組合(AJC)第31回 定例勉強会
「どこまで保護者の要望を受け入れる?」
〜事例を通して考える“今どき”の保護者対応のコツ〜
中小塾の多くの組合員が、学習塾を運営していく上で役に立つ事業活動を中心に運営している全国学習塾協同組合(AJC)は、6月14日(金)、第31回定例勉強会をオンラインで開催した。会の冒頭、全国学習塾協同組合 理事長 森 貞孝氏のあいさつに続き、前半は、株式会社メイツ(遠藤 尚範代表取締役)伊藤 悠木氏が「aim@ひとつで指導も運営も一新!」と題しオールインワン教材を紹介した。後半は、株式会社サイタコーディネーション 代表取締役・教育学博士の江藤真規氏が「『どこまで保護者の要望を受け入れる?』〜事例を通して考える“ 今どき”の保護者対応のコツ〜」をテーマに講演を行った。
森 貞孝氏あいさつ
勉強会は、会を重ねてそれなりの成果をあげています。今年の3月~4月は生徒募集が思うようにいかなかったという声も聞かれますが、コロナ禍後における社会変化の中、我々は次の段階に進まないといけません。経営や生徒募集につながるお話を聞き、いい結果を出しながら塾が伸びていくことに期待しています。
【「aim@ひとつで指導も運営も一新!」】
株式会社メイツ アプリ事業チーム セールス╱カスタマーサクセス担当
伊藤 悠木 氏
弊社は「教育をアップデートし、子どもたちに最適な教育を提供する」をミッションに、教育ICTを活用し子どもたち一人ひとりに最適な教育が届くよう教育のアップデートを目指しています。進学塾メイツ、個別指導塾WAYS(ウエイズ)といった塾運営事業と「aim@」(エイムアット)などのアプリ開発事業により運営・開発を進めています。
学習プラットホーム「aim@」は全国3000教室に導入。地域密着塾に必要なものをすべて兼ね備え、学習塾で必要な教材が追加料金なしで使い放題、アダプティブラーニングにより最適な問題を最適な分量で出題、リアルタイム進捗確認で適切なコーチングが可能、現場目線で開発した教材だから直感でサクサク操作できるなどの特長があります。定期テストの成績アップ、中3生の受験対策、個別最適化、教材準備解消など塾の強みを生かすニーズにアプローチできます。
検定対策では、英検、漢検、数検を網羅。診断テストで苦手をあぶり出しピンポイントな対策が可能です。英検は講座の申し込みから、ワークシート、販促用チラシまでご用意。ダウンロードしてすぐに利用できます。定期テスト対策のコンテンツも充実しており、全国の公立中学校で使用されている教科書に対応。5教科のみならず、実技教科の対策も可能です。また、生成AIを活用したコンテンツも続々とリリースしています。例えば、生徒が入力した英作文に対して即座にフィードバックを行ったり、国語の作文や小論文の添削ができたりするので、これまで以上に多くの場面で「aim@」を活用していただけます。
今後、さらに生徒のモチベーションをあげるコンテンツの開発・運営はもちろん、塾運営にかかわる業務負担を軽減する教室管理システム「reco」(レコ)などを通して、教室をさらにスマート化してまいります。ちょっとさわってみようかなと思われたら気軽にお声がけください。
【「どこまで保護者の要望を受け入れる?」
〜事例を通して考える〝今どき〟の保護者対応のコツ〜】
株式会社サイタコーディネーション 代表取締役・教育学博士
江藤 真規 氏
保護者を取り巻く環境
私は保護者対象のセミナー等をさせていただく際に、参加者(保護者)にアンケート調査をさせて頂いていますが、その結果を見ても、保護者のニーズが年々変わりつつあることを実感します。塾への要望も多様化する中、塾の学習指導とはかけ離れた悩みも面談等で聞こえてくるのではないでしょうか。
中には理不尽な要求もあるでしょうから、当然すべてを受け入れるわけにはいきません。けれども、勉強の専門家という視点で解決できることには寄り添っていただきたいですし、過去の事例をあげながら保護者をエンパワーメントすることは可能です。信頼関係を構築し、「対立」ではない「つながり」を、ぜひ作っていただきたいと思います。
保護者対応のコツ1 傾聴とペーシング
聴くことは大事です。あいづちを打ったりオウム返し、要約をするなどの「積極的傾聴」ができているか、職場内で再確認してください。ペーシングは相手の声やペースにあわせること。分かりにくいことは具体的に尋ねる姿勢も大切です。「辛かったんですね」「大変でしたね」と、相手の気持ちを代弁することも重要です。保護者がようやく話してくれる悩みは、複雑で重層的、すぐに解決には至らないことも多いでしょう。「次回またお目にかかりましょう」と対応すれば、保護者からの信頼感も高まります。
保護者対応のコツ2 共感的理解
(内的ワーキングモデルを理解する)
人によってモノの見方、とらえかたはさまざま。その人なりの見方や感じ方を「内的ワーキングモデル」というのですが、この内的ワーキングモデルは、その人の生育歴や、どういった環境で大人になってきたかにも影響を受けています。つまり、その人なりの見方や感じ方は、外野が変えることはできないのです。変えようとするのではなく、「この人にはどんな世界が見えていて(View)、どんなことを感じているのか(sense)を、意識することが大切です。
要望と本心を分けて考え、寄り添う
要望として出てくる言葉をそのまま受けてしまうのではなく、その要望の背景には、保護者のどのような「本心」があるのかを、汲み取って頂きたいと思います。本心がわかれば、保護者との間につながりが作れるかもしれません。この人が本当に伝えたいことは何なのか、そこにアンテナを立てていただきたいです。
(事例①)
父子家庭。夕食のお弁当は父親が届けている。ある日授業の関係で父親がお弁当を届けにきたときには、すでに食事が始まっていた。父親は火がついたように怒った。さて、先生方はどう対応されますか。
「はいはい。わかりました。これからは時間通りにしますから」では、父親の怒りはおさまりません。ここで「要望」と「本心」を分けてみます。要望は「ちゃんと時間通り食べさせろ」。本心は何なのか、「あのお父さんはなんであんなに怒ったのか」を、塾内で話し合ってもらいたいのです。すると、父親の本心が見えて来るかもしれません。
父親にとってのお弁当はとても特別なものなのかもしれない。こんな話し合いができたら、「毎日お疲れ様です。お子さんめちゃめちゃおいしそうに食べてますよ」と、父親に声かけができるかもしれません。父親から塾への信頼感は増すことでしょう。これが対立ではなく、つながりを作るための方法です。
(事例②)
「なかなか成績があがらない。塾ではちゃんとやっているか」と頻繁に相談にくる母親。まだ受験には時間があることを伝えても、しつこく聞いてくる。調べてみると、最近不登校気味で学校に行けなくなっているという。さて、先生方はどう対応されますか。
「大丈夫ですよ」この言葉だけでは、母親の不安は払拭されません。「なぜ、こんなにも心配をするのか」と本心を探ります。
不登校気味であることがとても心配。塾しか相談できる場がない。こんな事情が見えて来れば、「塾では楽しくやっています。自信も出てきているので、見守っていきましょう」と、言葉かけができるのでは。母親は少し安心するでしょう。
クレームには、担任だけではなく、チームとして対応していくことも大切です。そして、最も重要なのは子どもを被害者にしないこと。そのためにも、塾内で勉強会をして頂きたいと思います。あきらめずに寄り添うことで保護者対応力は上がります。