第13回 オレコサミット ICT/AIと共に歩む教育

2024-09-02

7月7日(日)、株式会社スタディラボ(地福武史代表取締役、東京都)が主催する「第13回 オレコサミット」が、ビジョンセンター八重洲で開催された。今回はELSA Japan 上級事業開発部部長であり、東京理科大学非常勤講師の髙橋一也氏を招いたプレミアム特別講演「ICT/AIと共に歩む教育」を開催。ELSAはGoogleが出資し、生成AIを搭載した英会話学習アプリ「ELSA Speak」を運営する企業だ。
なお、髙橋氏は教員時代に、日本人として初めて「グローバル・ティーチャー賞」の最終候補者に選出されている。髙橋氏の講演のほか、株式会社ウィザス(生駒富男代表取締役社長、大阪市中央区)が運営する第一ゼミナールによる事例紹介などが行われ、オンライン英会話の可能性が示唆される1日となった。

■AIの進化とオンライン英会話の未来■

株式会社 スタディラボ 代表取締役 地福 武史 氏

(株)スタディラボ 代表取締役 地福武史 氏

(株)スタディラボ 代表取締役 地福武史 氏

3年前に私が「2030年教育現場の未来」と題して講演した際、「分散型」で「個人に合わせてカスタマイズ」できるスピード感のある学習環境が重要になると述べました。まさにこれをAIが実現しようとしています。
また、昨年の「オレコサミット」で私は教育分野でのAIの活用には次の5点が考えられると語りました。
「パーソナル学習の進化」「自主学習のサポート」「教師の補完と効率化」「コラボレーションと共同作業の促進」「指導システムの改善」です。
さて、コロナ禍によってオンライン化が促進され、個別最適性が教育現場で「追求」されてきました。今後はAIによって個別最適性が「実現」されていく時代になるでしょう。この「実現」という言葉にこれからの塾に関する様々なヒントが隠されていると思うのです。生徒一人ひとりの特性を伸ばせるかどうか。個別最適性をポイントにして塾のあり方が再定義されていくと私は考えています。
こうした今、オンライン英会話はなぜ重要なのでしょうか?生徒は塾でも自宅でも、自分のスケジュールに合わせて、外国人講師とリアルタイムで英会話のレッスンを予約できます。このレッスンによって、より実践的な発音やリスニングの向上を図ることができます。
これからは子どもたちにとって英語が堪能であること、国際感覚を持っていることが、将来の職域を数十倍にまで広げることができる時代になります。学習塾においては、オンライン英会話を「6教科目」と位置づけ、労働生産性も経済合理性も向上させ、大きな売上につなげることができるのです。
そこで、学習塾専用のオンライン英会話「OLECO(オレコ)」をお届けする弊社は今年度、このサービスを次のように発展させていきます。まず、新たな教材をリリースし、小学校低学年から高校までLTV(顧客生涯価値)の最大化を図ります。そして、外国人教師の指導レベルを向上させるとともに、現地リソースも拡張させ、サポート体制も拡充させていきます。こうした取り組みが皆様の塾のますますの発展に寄与できれば幸いです。

■プレミアム特別講演 ICT/AIと共に歩む教育■

ELSA Japan 上級事業開発部 部長 髙橋 一也 氏

ELSA Japan 上級事業開発部部長 東京理科大学非常勤講師 髙橋一也 氏

ELSA Japan 上級事業開発部部長
東京理科大学非常勤講師 髙橋一也 氏

私は2000年頃から、私の出身校である慶應義塾大学の図書館にある「グーテンベルク聖書」のデジタルライブラリー化に取り組んできました。この聖書は活版印刷術による西洋最初の本格的な書物で、世界に6冊しかないといわれています。その1冊が1987年にニューヨークで行われたクリスティーズによるオークションで落札されました。値段は6億円でした。
慶應が所有している1冊は、旧約聖書の部分だけです。私はこの聖書を1ページずつスキャニングして世界中の人たちが閲覧できるようにしました。
この聖書には文字の下に飾りが入っています。飾りは職人による手描きです。所有者の好みに合わせてデザインしたのです。つまり、グーテンベルク聖書は新しいテクノロジーと古いテクノロジーが融合された作品といえます。
これは今の教育業界と同じです。「ノートを取るのをやめて、すべてiPadにすればよい」「教科書はすべてデジタルにするべきだ」というわけではなく、両方必要なのです。iPadは調べるのに便利ですが、時間をかけて思考するには紙のほうが向いています。共通テストの数学の図形問題を解く際、紙ではないと補助線を引くようなイメージができないと思います。
AIに関していえば、これからはAIとともに学ぶ時代だと考えています。AIを導入すると、子どもたちが受け身になって学ばなくなるという意見もありますが、これは誤解です。使い方によって子どもたちの力を大きく伸ばせます。例えば、今の子どもたちは長時間集中することが難しくなっているといわれています。それなら、ゲーム感覚の学びである「ゲーミフィケーション」を導入すればよいのです。AIを使って即時フィードバックを与える学習法です。
一方、受験に発音の問題が出題されなくなったので、発音指導をしない教育現場も残っています。また、中学では入学時から単語を暗記させるなど、音と文字と意味を結びつけていない学習がなされている傾向があります。これでは非効率です。
一方、AIを搭載した英会話学習アプリ「ELSA Speak」は発音指導を徹底し、音と文字と意味を結びつけるフォニックスによって、自然な言語学習ができるようになっています。
では、こうしたAIの時代に、なぜ、オンライン英会話が必要なのでしょうか?冒頭で私がお話しした当時の最先端の技術と手描きが融合した「グーテンベルク聖書」を思い出してください。AIとリアルな人間との会話が融合することで学びが豊かになっていくのです。しかも、オンライン英会話は聖書の飾りと同じで、カスタマイズつまり個別最適化もできます。
また、東北大学で教えている韓国人の教授が状況を見て言語を習得することの重要性を説いています。「手伝って」という日本語を文字で見て覚えるよりも、重い荷物を持っている人の状況を見ながら覚えるほうが記憶に残るというのです。人は話す時に左脳で言語処理をしますが、相手の気持ちを読むのは右脳の働きです。つまり、状況を念頭に置きながら英語を学ぶほうがより効果的なのです。
私は音と意味と文字を結びつけて学ぶことは重要だと話しました。「ELSASpeak」は、最先端のAIによって発音矯正のフィードバックを即時にしてくれます。アプリが発音を採点し、改善案を提案してくれるのです。ゲームのように楽しみながらネイティブに伝わる発音に近づけます。こうして発音を強化したあと、AIと実践を想定した会話のレッスンができます。その上でオンライン会話を使い、ネイティブの先生の表情を見たり、気持ちを考えたりしながら会話を楽しむことで、さらに効果的な英語学習ができるはずです。

■第一ゼミナール事例紹介■

株式会社ウィザス 教務総括部 小西 邦幸 氏
株式会社ウィザス 高校受験支援部 英語推進室 井野 貴夫 氏

[左] (株)ウィザス 高校受験支援部 英語推進室 井野貴夫 氏 [右] (株)ウィザス 教務総括部  小西邦幸 氏

[左] (株)ウィザス 高校受験支援部
英語推進室 井野貴夫 氏
[右] (株)ウィザス 教務総括部 
小西邦幸 氏

小西 第一ゼミナール(以下、第一ゼミ)では、(株)スタディラボ様の「OLECO」を小中高の一貫教育に活用させていただいております。子どもたちは楽しそうに学び、驚くほど英語が話せるようになっている実感があります。 
さて、第一ゼミが教室を展開する大阪府と英検は切っても切れない関係にあります。大阪府の公立高校入試では、英検2級を取得していれば、英語で80%の得点を保証してもらえるからです。こうした現状を踏まえて中3で英検2級に合格するために、小学生のうちにまず4級に合格できるという指導を確立させたいと考えています。
井野 私は昨年から英語推進室の担当となり、「英語に強い第一ゼミ」の実現に向けて様々な業務を担っております。本日は第一ゼミが小中学生に英語をどのように指導しているのかをご説明させていただきます。
一つは中学生に向けた「クイックレスポンス方式」による単語学習法です。「プラタン2000」という教材を用い、正しい発音を聞いて即座に口で発することを繰り返すことで、九九のように口から英語が自然に出るようにしています。この方式の採択には、元灘中学校・高等学校英語科で現在は第一ゼミの顧問である「キムタツ先生」こと木村達哉先生からアドバイスをいただいています。

会場の様子

会場の様子

もう一つが同じく中学生に向けた英会話教材「プラストーク」の導入です。予習から実践、復習のサイクルを通じて、学習の習慣化と定着を図ります。これにより「OLECO」では外国人講師と自信を持って会話ができるようになります。
ほかに小5から高3まで受講できる「英検合格集中講座」があります。
小3から小6に向けては「小学生わくわく英語コース」をご用意しました。この特長は日本人教師と外国人教師によるハイブリッド方式であること、毎週フルオンラインで受講できることです。しかも、日本人教師は全員プロの通訳が担当しています。また、このコースは学年別の指導ではなく、無学年の英検目標級のクラス指導に変えています。さらにすべてオリジナル教材で「単語×文法×会話」それぞれが連動する学習システムになっています。
こうした小中学生に向けた第一ゼミの新しい学びの目標は、生きた英語を学びながら、これまで以上に高校、大学、入試やその先の社会に出てからも役立つ学習にすることです。
第一ゼミで英語のレッスンを受けている小学生にアンケートを取ると「自信がついた」というコメントが多く、ほかにも「自分から進んで勉強しようと思うようになった」「他の教科も頑張ろうと思った 」というコメントが寄せられています。こうした声を目にするたびに、嬉しさが胸にこみ上げあげてきます。

■スタディラボ 今後の展望・商品紹介■

株式会社 スタディラボ 有馬 剛介 氏
株式会社 スタディラボ 鈴木 祥平 氏
株式会社 スタディラボ 朝比奈 正人 氏
教育開発出版 株式会社 関 良平 氏

[左上] (株)スタディラボ 鈴木祥平 氏 [右上] (株)スタディラボ 有馬剛介 氏 [左下] 教育開発出版(株) 関良平 氏 [右下] (株)スタディラボ 朝比奈正人 氏

[左上] (株)スタディラボ 鈴木祥平 氏
[右上] (株)スタディラボ 有馬剛介 氏
[左下] 教育開発出版(株) 関良平 氏
[右下] (株)スタディラボ 朝比奈正人 氏

鈴木 まず、高校生用の新教材のご紹介をさせていただきます。教育開発出版様の教材を、オンライン化した新しいサービスであり、塾の皆様のお声を反映させた教材になっております。その一つが「高校リード問題集」です。
「高校リード問題集」は「英語」「英文法」「リスニング」「大学入学共通テスト問題週」までを揃え、塾の先生方から指示されている教材です。これらを繰り返し解いていけば、大学入試に向けて確かな学力を養成できるラインナップになっています。
本日、私がお持ちしたのは「英語1」と「英文法A」です。こちらに対応したオンライン英会話サービスが来年の春にリリースされます。
朝比奈 新レッスンでは構文や英作文、絵をみてその状況を英語で説明するピクチャーディスクリプションなど様々なタイプの問題をご用意しました。
『What do you like to do in your freetime?』のような基本的な質問から、『あるテーマについて自分の考えとその理由を伝える』といった高度な質問まで、段階的にレベルが上がる自己表現の問題もご用意しています。また解答例もライティングにも活かせる内容となっております。これを外国人講師とともにレッスンできます。答えられれば、講師はとても褒めてくれます。また、答えが複数ある問題にどのように答えても講師がしっかりと対応してくれます。
有馬 続いて「Feelnote」について説明します。これは、生徒が様々な学びや活動から得られた気づきや成長を記録し、振り返り、進路選択などに役立てるSNS型のeポートフォリオツールです。日々の活動を投稿形式で簡単に蓄積できるとともに、他の先生や生徒と「いいね」やコメントで交流できます。また、AI分析で生徒に合った進路も提案します。 
このツールを開発した背景には、大学入試の変化があります。ご承知の通り、一般選抜で受験する生徒の比率が半分を切り、総合型選抜や学校推薦型選抜で受験する生徒が増えてきています。
こうした動きに応えるためには、日々の生徒の様子を先生方がしっかりと把握して進路指導に活かしていくことが必要になってくるはずです。この「Feelnote」なら、生徒の成長を「見える化」でき、指導に役立てることができます。また、ポートフォリオは総合型選抜での入試にも大きく活用できます。

■閉会に寄せて■

(株)市進ホールディングス 代表取締役会長 下屋俊裕 氏

(株)市進ホールディングス
代表取締役会長 下屋俊裕 氏

株式会社 市進ホールディングス 代表取締役会長 下屋 俊裕 氏

少子化と労働力不足が予想以上に進む今、私は塾が原点に立ち返り、良い循環をつくり出していくべきだと考えています。良い循環とは何かというと、今いる生徒さんの退塾率を減らすとともに、新しい生徒さんを増やすことです。
そのためには、今、塾で学んでいる生徒さんに積極的に声をかけることが大切です。生徒さんのことを知っていれば自然と声をかけることができます。いろいろな場面で常に声をかけることができているのかどうか、皆さんもじっくり考えてみてください。
声をかければ、教室の中に活気が生まれます。教室の活気は、近隣の人たちや見学に来た子どもたちに好印象を与えます。 
また、生徒さんたちの名前を全員覚えて、一人ひとりの個性や性格、成績をすべて把握していれば、その子の学力をさらに伸ばしていけるはずです。
そこで力を発揮するのがAIやICTなど最先端のツールであり、オンライン英会話がその一つです。これらを活用すれば、生徒さんをよく知ることができ、個別最適化ができます。
こうして生徒さんの成績がアップするだけでなく、教室に活気が生まれれば、口コミで塾の評判が周囲に広がっていきます。その結果、新しい生徒が増えてくるのです。これが良い循環です。
今日は塾の原点とは何か、個別最適化とは何かをじっくりと考える機会をいただけたと思います。ありがとうございました。

■ご挨拶■

株式会社 スタディラボ 上席執行役員 峰嶋 聡子 氏

(株)スタディラボ 上席執行役員 峰嶋聡子 氏

(株)スタディラボ
上席執行役員 峰嶋聡子 氏

本日のセミナータイトルである「オレコサミット」は弊社のオンライン英会話の商品名を冠したものとなっております。しかし、本日は「オレコサミット」と題しながら英語教育の枠を超え、そもそも「教育とは何だろうか?」を考えさせられる有意義な一日になったと感じております。
私は、第一ゼミナール様から生徒さんに「自信がついた」という声が多く寄せられたというお話を聞きながら、自分の娘のことを思い出しました。娘もオンライン英会話で学んでいます。その娘がしっかりと準備をしてから臨んだ日の外国人の先生とのレッスンは「とても楽しかった」と喜んでいたのです。
私はかつて、塾で教えていて、「しっかり予習をしてから授業に臨んだ方が授業の内容が深く理解できて、ますます勉強が楽しくなるんだよ」と繰り返して生徒に語っていました。しかし、自分の娘にはこうした言葉を意外にかけていない事に気づかされた出来事でした。
このようにAIが進化を遂げる中、先生の役割とは何かを私は考えることが多くなりました。そして今日、皆様のお話を聞いて改めて確信したのです。先生の役割とは生徒に自信をつけさせ、学習意欲を向上させ、自分から学ぶように手助けをすることなのだと。AIやICTは、それをサポートしてくれる心強いツールです。
本日は貴重な機会をいただきまして本当にありがとうございました。また、ご来場いただきました皆様、ありがとうございました。


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