AJC(全国学習塾協同組合)森貞孝理事長の最新教育情報 第86回
「組合員塾の講師募集」という新規事業を始動
出生数が100万人を割ってから一気に階段を転げ落ちるように出生数の減少に歯止めがかからない。本年ももう10月だが、本年の出生数は70万人割れとの予測が大手シンクタンクなどから出ている。厚労省が8月末発表した1月から6月までの人口動態統計(外国人を含む)は前年同期比5.7%減の35万74人で、奇跡的な出生数の増加がない限り、日本人の子どもの出生数は60万人台に落ち込むと思われる。
これについては改めて12月に取り上げたいが、青少年の減少がそのまま求職者の減少に跳ね返って今企業の求人状況が厳しさを増している。学習塾も例外ではない。昨年ある塾からせっぱつまった講師募集の依頼があった。その塾の中心的な講師が突然入院してしまった。助けてほしいとのこと。その講師は40代の人気講師で多数の教科を受け持ち毎日いろいろな学年の生徒を指導していたとのこと。そんな教師は簡単には見つからない。何コマか埋める程度の講師ではとても間に合わない。生徒も減り出して、とうとう塾を閉めざるを得なくなった。そんな極端なケースはほとんどないが、講師を集めるのは頭が痛い。
小規模な塾は塾の生徒が大学に合格するとその塾でアルバイトしないかと声をかけて講師の補充をしている。しかしそれも良し悪しで、うまく成功する場合もあるが、塾生は近くから通ってきているため、あの程度の子が先生になって教えているのではと親同士の口コミで生徒数の減少につながったりすることもある。
当組合では必要な講師をキチンと揃えてしっかり指導できるように、組合が先頭に立って、講師を集める事業を行おうと考えた。初めは組合のホームページに講師募集欄を設け、そこに傘下の塾の募集内容を並べて、希望する地域の塾と指導内容などがマッチングするようにしてみたらどうか。いくつもの塾をまとめて講師募集のチラシを作ってみたらどうだろうかなどを考えた。自塾の講師の募集ならいろいろしてみてもいいのではないか。あちこちに話している段階でそれは違法であることが分かった。募集行為はすべて厚労省の許可を得て行わなければならないのだ。賃金・労働時間・労働環境・残業や有給休暇など働く人の立場をあらゆる面からしっかりと守る内容を法律で定め、求人行為はそれらを守ったうえで、申請して認可する仕組みだ。
当組合はそのための準備をはじめ、募集行為の研修を受け書類を整えて申請し、昨年12月、特別の法人に対しての無料職業紹介所を行う許可とその指定番号をいただいた。早速募集を開始しようとしたが、その事業活動を行うためには、定款の目的欄にその事業を明記する必要がある。当組合は大臣認可の事業協同組合なので、経済産業省に直ちにお伺いを立てた。本来ならばこの事業を始めたいと考えた段階で、事業実施についての相談や定款変更のことなどを経産省の担当課に相談すべきだったのだが、生徒募集などと同じくあまりにも毎日の業務の一つとして行っていることを組合がやろうと考えたので、新規の事業としての意識がなかったこと、厚労省が親身に応対してくれたことなどから経済産業省への申請が遅れてしまった。
書類を整えて提出し、6月中旬に大臣の判を押した定款変更承認の書類が届いた。夏期講習には間に合わない。9月から事業を始めて組合員塾の講師募集には役立つようにしっかりと進めていきたい。