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    いま考えるべき教育と経営の論点

STUDYPLUS AGENDA 2024
いま考えるべき教育と経営の論点

2024-11-01

第1回 スタディプラスアジェンダ【DAY1】

少子高齢化を背景に、644万人の労働力不足が予測される「2030年問題」が迫る中、教育機関での人手不足や生徒の学習環境・意欲の変化、高校・大学入試形態の多様化などが進んでいる。このような環境を背景に、教育業界も新たなビジネスモデルや技術の活用、教育ニーズの変化に対応し、今そして未来の子どもたちに教育サービスを提供し続けることが求められている。スタディプラスでは、2日間にわたって教育業界の方々と課題や具体的な戦略を共有。モデレーターはスタディプラス株式会社 取締役の宮坂直氏が務めた。
今号と次号に分け、カンファレンスの内容をダイジェストで紹介する(敬称略)。

Youtubeはこちらから
https://www.youtube.com/@StudyplusAgenda

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[Session 1]
定員割れが進む地方の教育事情と学習意欲への向き合い方

[左から]スタディプラス(株)取締役 宮坂直 氏、(株)夢現 代表取締役MUGEN 代表 小牧聖 氏、京大個別会原町校 塾長 佐藤晃大 氏

[左から]スタディプラス(株)取締役 宮坂直 氏、(株)夢現 代表取締役MUGEN 代表 小牧聖 氏、京大個別会原町校 塾長 佐藤晃大 氏

SPEAKERの小牧聖氏は、株式会社夢現の代表取締役でMUGENの代表 。鹿児島市出身で塾講師歴40年。2008年に進学塾MUGENを創業、2010年に株式会社夢現として法人化。小中学生向けの「進学塾MUGEN」、高校生専門校舎「ハイスクールMUGEN」、 通信制高校サポート校「MUGEN高等学院」を運営する。
同じくSPEAKERの佐藤晃大氏は京大個別会原町校の塾長。福島県南相馬市出身。「南相馬市の子どもたちの人生を変える」というビジョンのもと、2014年2月に南相馬市で京大個別会原町校を開校。都心と比べ、情報・教育格差が広がる地域でも人生を自らの力で切り開ける人材を輩出するために小中高校生対象に一貫指導を行っている。
宮坂 全国的に大学入試、高校入試は各地域・エリアで定員割れが進んでいます。地域の動向はいかがですか。
小牧 鹿児島は県全体だと9割が定員減というところもありますが、市内では進学校を中心に倍率を維持できているところもある。公立高校でも定員割れがある一方で、私立高校への人気が高まっています。市内と市外でも影響が分かれます。
佐藤 近年の福島県の高校入試では過去5年間定員割れ。私の学区では公立中学・高校しかない状態で、進学校が1校ありますが、そこも定員割れ。子どもたちが望めば入れる状況です。震災前7万人くらいの人口が現在5万5000人ほどで、南相馬市は2040年に65歳以上が50%以上になります。大学もありませんので高校受験の定義づけから始めます。
宮坂 学習意欲への向き合い方、取り組みについて教えてください。
小牧 外部評価および自分と向き合う両方が必要。子どもたちが自己開示をしながら「今日、これをやるんだ」という目標を自分で決められるように我々がサポートします。その子の中にある生きていく上で大切なモノ、我々は『本分』と呼んでいますが、本分を見つけてあげたい。例えば小学生がプリントを持ってきたら、『ひらがなの「す」がいいね!上手に書けてるね』『丁寧なやり直しが大好きだよ』と、本人が気づいてない部分に教員が気づき、子どもたちに届ける仕組みを作ってきました。それを積み重ねていくと、人との競争ととらえていたものが、自分の成長というフェーズに変わっていきます。僕らは生徒さんと向き合うときに、社会の一員として一緒に働く仲間を育成しているという想いで関わっています。いい点数がとれたから優れている、いい順位だから素晴らしいと外部評価に依存して学ぶ姿勢を作ってしまうと、逆境に置かれたときに、自分を信じられなくなり学校にも行けなくなるようなことが起きてしまうケースもあるのです。
佐藤 塾の方針として子どもたちと話をする環境を整えており、中学生も高校生も教室で、各地にいる卒塾生の先生と面談するなどリアルとオンラインのハイブリッドで進めています。自立指導に近いスタイルでタブレットによる学習を通して、講師のところに採点や質問に行く回数や通塾回数を増やし、問題を確認する際に日頃の様子などを話すように心がけています。子どもたちは塾で先生と話せることが嬉しくて勉強を楽しんでいます。また、卒塾生に「大学とは」などのキャリア教育を実践してもらっています。
小牧 非常勤や正社員の8~9割はMUGENの卒塾生が占めています。卒塾生だから理念をよく理解したうえで、自分たちがしてもらったことを後輩たちにもしてあげたいとの思いが強い。いい循環が生まれています。様々な題材を取り上げ話し合う研修会を週2回、僕が主催しています。研修により最上位の目的に向け、主体的な取り組みができるようになってきたと思います。
佐藤 スタディプラスの学習記録をもとに面談を始めるのですが(*)、生徒がいつどこで何をやっているのか一目瞭然。講師たちが情報収集をしてエビデンスをもとに生徒と対話するので説得力があります。
小牧 僕たちは生徒の学びをプロデュースしたいので、スタディプラスははずせないコンテンツです。学習意欲に向き合う上で、あれをやりなさい、これをやりなさいだけでは生徒はどうしても受け身になる。子どもたちがやっていることをキャッチできる関係をつくり、認め、背中を押してあげるには細かいところまで見えるかどうかが大事です。

(*)「Studyplus」は『学習記録』と『コミュニケーション』のプラットフォーム。このプラットフォーム内では、学習者の日々の勉強量や時間を記録、可視化できるだけでなく、
あらゆる教材や学習サービスでの勉強内容を記録できる。プラットフォーム内にはSNS機能もあり、同じ志望校や目標を持った人や教育者とつながりモチベーションを継続できる
ような仕組みになっている。

[Session 2]
国が考える教育データのこれから

SPEAKERの久芳全晴氏は、デジタル庁国民向けサービスグループ企画官。2003年文部科学省入省。高等教育政策、地域スポーツ政策、熟議に基づく教育政策形式、教育委員会制度、新国立競技場整備事業、学校施設整備、気候変動予測データの創出・利活用に携わる。2023年6月よりデジタル庁国民向けサービスグループにて企画官(教育班担当)として勤務。

デジタル庁の施策背景

[左]スタディプラス(株)取締役 宮坂直 氏[右]デジタル庁国民向けサービスグループ企画官 久芳全晴 氏

[左]スタディプラス(株)取締役 宮坂直 氏[右]デジタル庁国民向けサービスグループ企画官 久芳全晴 氏

宮坂 文科省のGIGAスクール構想で、1人1台端末の運用が始まり4年目、早い学校では5年目を迎えます。授業や端末活用も進んできた中で、教育関係省庁の立場から教育データや教育ICTの展望、現在地をお話しいただきます。
久芳 デジタル庁のミッションは「誰一人取り残されない、人にやさしいデジタル化を」。デジタル化は手段であって目的ではありません。子どもたちが健やかに成長し、自立して学んでいくことをデジタル技術でサポートするものです。
久芳 私が所属しているのは国民向けサービスグループです。国民一人ひとりのニーズやライフスタイルに合ったサービスが提供される豊かな社会、これまで以上に安全・安心が確保された社会、継続的に力強く成長する社会の実現を目指しています。人口減少が進み、今後20年間で労働人口が3分の2に一気に進み、供給が需要に合わせる時代では、データが必要であり、これを流通させるデジタル基盤が必要です。ひとつの企業、一つのファクターだけがやっても意味がありません。公共財のような形でデータが流れるように整備し、子どもたちの個別最適化の学びを加速する必要があります。
これらを関係省庁とともにつくっています。関係省庁では文部科学省が一番大きな役割を担います。デジタル技術的な面はデジタル庁が、民間の振興、学外教育(塾・習い事)の産業としての発展に向けた教育コンテンツ活用の促進は経済産業省、学校内・学校外を問わず教育データの流通を促進するための仕組みの構築は総務省です。令和4年1月7日デジタル庁・総務省・文部科学省・経済産業省連名で、教育DXの目指す姿として「誰もがいつでもどこでも誰とでも自分らしく学べる社会」と定義。子どもたちの立場、親としての立場での実現を掲げ、各省庁が取り組みを推進。教育データ利活用ロードマップについても、さらに改訂を進めていく予定です。

学校現場における教育データの利活用

教育データ利活用というと「ビックデータ分析するんですか」と言われますが、教育関係ではまだそれほどデータは貯まっておらず、しかも個人情報であるため扱い方が難しいです。各現場における進め方のイメージとしては、ステップ感をもって、実現されるメリットを具体的に認識しながら、前向きにデータ連携を推進できることが重要だと考えています。小中学校では、現在、デジタル教科書をはじめ、ドリル教材や協働学習・授業支援ソフトなどを使っています。80%ほぼ毎日使っているところもあれば40%の学校しか使ってないところもあり二極化しています。端末活用シーンは授業でほぼ毎日活用しているのが65・2%、毎日持ち帰り利用は少ないです。デジタル庁の取り組みは、教育分野における校務系・学習系のデータ連携を整理し、関係省庁で連携し、標準規格等の実装・普及に努めることです。課題もいろいろある中、私教育領域との連携や本人起点での連携など、意見交換しながらニーズを教えていただきたいと思います。もともとインターネット、デジタル技術は情報の民主化を目的につくられました。今後個人に対して主導権を出すか出さないかが大きな潮流になっています。

[Session 3]
不登校の増加と新しい学校のかたち

[左から]スタディプラス(株)取締役 宮坂直 氏、(株)WIALIS代表取締役 中島由貴子 氏、クラーク記念高校教務開発部教務開発課課長補佐 山下学 氏

[左から]スタディプラス(株)取締役 宮坂直 氏、(株)WIALIS代表取締役 中島由貴子 氏、クラーク記念高校教務開発部教務開発課課長補佐 山下学 氏

SPEAKERの中島由貴子氏は株式会社WIALIS(ウィアリス)代表取締役。大手個人塾での教育プランナー、通信制高校設置のコンサルティング業務などに従事。学校に行けない子どもたちが安心して学習や活動できる場所を提供したいと2022年に不登校中学生向けのオンラインフリースクールを設立、北は北海道、南は沖縄まで小6~中3の児童生徒が参加している。
同じくSPEAKERの山下学氏は、クラーク記念高校 教務開発部教務開発課 課長補佐。入職後単位制開発部にて、前身となるオンラインを組み合わせた新コースの立ち上げに参画。その後教務開発部にて社会と連携した探究カリキュラムの開発や効果検証、メタバースを活用した教育プログラムの開発など新しい教育の開発を中心に取り組んでいる。

宮坂 不登校児童生徒が過去最多。中学生は10人に1人が不登校傾向という時代になっています。不登校の要因として多い無気力、不安といったことについての肌感はいかがですか?
中島 生徒も保護者もどうして学校に行けなくなっているのかわからず、それが漠然とした不安とミックスされ学校に足が向かない。小学校から中学校に上がるときに無気力になったり悩んだりするケースは多いです。勉強が今までとは全く違うため、競争することへの苦手意識などで学校に行けなくなり勉強が遅れ、ますますわからなくなるという悪循環です。まずは本人も保護者にもいったん学校という存在を忘れて、オンラインのフリースクールに通ってもらうことで、誰かと接することの楽しさや学ぶことの面白さを体験してもらいます。メタバースの仮想空間になっていて、アバターで接してもらうのですが、ゲーム感覚でリラックスして始められるのがメリットです。
山下 不登校は一定数いるのは事実ですが、学びの選択肢として肯定的にとらえられる時代になり、選択肢も広がっているので、あえて学校に通わないという選択をする子も増えています。
宮坂 通信制高校が増え、生徒数も伸びています。その背景も伺いたいです。
中島 不登校の子どもたちの第一の進学先が通信制高校になります。フリースクールから別室登校や次のステップに進める子もいますが、進学となると全日制高校は内申書が重要視されるためハードルが高いです。
山下 不登校の子どもたちにとって通信制高校は第一の受け皿。eスポーツやインターナショナル、プログラミングなどの特化した学びのためにあえて自由な通信制を選ぶ子どもも近年増えてます。クラーク国際とその連携校では生徒の目標や学習プランに合わせて通学スタイルを選択することができます。CLARK SMART(クラークスマート)は、オンラインと通学を組み合わせた「スマートスタディコース」と、月1~2回の通学で高校卒業資格取得を目指す「単位取得コース」があります。
宮坂 フリースクールの手厚いサポートを受けるためには基本的に自己負担。いろいろと裏側で尽力されていると思います。
中島 フリースクールは基本的に国からの公的補助は受けられません。保護者への負担が大きいという課題はありますが、一番の課題は、センシティブな問題を抱えている子どもたちに対応する人材確保です。効率化や仕組みを作る中でICT学習を利用することが条件の一つになっておりICTが子どもたちの学びを支えています。チャットなどを使いながら面談をするほか、タイムラインは子どもたちの日常が細やかに垣間見えるツールとして使っています。今後はさらに公教育との連携にも期待しています。
山下 学習ログをもとに教師がコーチングをしながら、二人三脚で進路に向き合うようにしています。オンラインと通学を併用したコースでは、定期的にコーチング面談を実施。先生と生徒が「Studyplus」の画面を見ながら学習の振り返りを共有し学習計画を立てます。学習計画を繰り返すことで自律的学習を育んでいます。


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