
私教育を1つの力に
「〈私教育〉の生き残りについて」「日本の教育の新しい道」
さあ、本音を述べよう
今回は「〈私教育〉の生き残りについて」と、「日本の教育の新しい道」について述べたい。おそらく賛否両論、「このバカ、何を言ってる」ということになると思う。でも、おそらく真実でしょう。そして皆さんも本音ではそう思っているはず。
「私教育」の生き残りについて。学習塾の経営者、先生たちにとって今の時期から、年末、年明け、春にかけてはいちばん忙しく、重要な日々だ。この数カ月の状況が来春の生徒募集に大きく影響する。一人でも多く希望校、上位の学校に入れ、生徒と保護者の満足度を上げねばならない。「生徒を増やす」学習塾にとって重要なことだ。学習塾のコンサルタント、アドバイザーは様々な提案を行い、教材業者も新製品を開発し、売り込みに忙しいはずだ。「学習塾が生徒を増やすためには、効果的なマーケティングと顧客満足度の向上が不可欠です。以下に具体的な戦略を紹介します」。さあ、皆さんの塾はどんな対策を取っていますか
(1)塾のブランディングとマーケティング戦略
①ターゲット層を明確にする
小学生、中学生、高校生、受験生など、ターゲット層に合ったプランを立てる。各学年ごとのカリキュラムや進学対策を強調する。
②SNS・Webサイトを活用する
Insragram、X、TikTokなどで保護者や生徒に響くコンテンツを発信する。Webサイトで体験授業の予約や問い合わせが簡単にできる仕組みを整える。
③口コミの活用と紹介キャンペーン
保護者や既存生徒からの口コミを促進し、紹介制度を活用する。例…「友だちを紹介したら○○円の割引」
実際の合格実績や成功体験をWebや広告に掲載。
(2)サービスの改善と差別化
①無料体験授業・説明会の実施
学習内容や塾の雰囲気を知ってもらうため、無料の体験会を開催する。オンラインと対面の両方で説明会を行うと、参加者の幅が広がる。
②保護者向けのフォロー体制
定期的な面談や進捗レポートを送ることで、保護者の信頼を獲得する。保護者向け勉強会や講演会を開催することで付加価値を提供する。
③生徒のニーズに合わせた柔軟なプログラム
個別指導、集団指導、オンライン指導など、生徒の学び方に合った選択肢を用意する。
自習室や質問対応サービスを整備し、サポート体制を強化する。
(3)地域密着型の取り組み
①地域イベントや学校との連携
地域のお祭りやイベントに参加することで、塾の認知度を向上させる。地元の学校と連携し、勉強会やイベントを共催する。
②チラシ・ポスティングと折込広告
周辺地域に向けてチラシやパンフレットを配布する。地域の新聞折込広告を利用するのも効果的。
(4)料金プランと入塾のしやすさ
①お得なキャンペーンの実施
「入塾金無料」や「最初の一ヶ月無料」などのキャンペーンを行う。季節講習に参加することで入塾料が割引される特典を設ける。
②分かりやすい料金体系の提供
月謝や教材費などを明確にし、保護者に安心感を与える。無理のない分割払いプランも用意するといい。
(5)結果重視の実績アピール
①合格実績・成績向上の可視化
過去の合格実績や生徒の成績向上例をデータで見せる。成績上位者への表彰や努力を評価することで、生徒のモチベーションを高める。
②目標達成に向けたサポート体制の強調
個別の目標設定と進捗管理で、目に見える成果を保証する。
コレは、「学習塾が生徒を増やす方法」と質問すると、CnatGptが数秒のうちに出した答えだ。
「これらの取り組みを組み合わせ、塾の魅力を最大限に伝えることで、生徒や保護者からの支持を得て、生徒数の増加が期待できます。顧客満足度を高めることが最終的に口コミや紹介につながり、長期的な成長が見込まれます」と続く。
この程度のことはどこの学習塾もやっている。しかし、思うように生徒は集まらない。当然の話だ。子どもの絶対数が減っているのだ。どこかの塾の生徒が増えれば、どこかの塾の生徒は必ず減る。限られた生徒の取り合いは、必ず破綻します。だったら一人当たりの単価を増やせばいい。しかし、そうもいかないのが現実でしょう。この状況は学習塾にとどまらず、私立学校、教材企業など「私教育」全体に影響を及ぼします。では、どうすればいいか。夢のような話だが、方法はあります。
日本の「私教育」の質は世界でも良質。間違っているのは……
1970年代の約5年間、僕はアメリカ、ロサンゼルスに住んでいた。大学に通いながら、「あさひ学園」という土曜日1日教える日本語学校の教師を3年間やった。海外駐在員の子どものための学校で、生徒たちは平日アメリカの学校に通って、一週間分の授業を日本の教科書を使って一日で学習する。
当時、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」の時代で、全米にパナソニック、キャノン、トヨタなど、日本製品が溢れていた。教育についても、日本式の規律ある授業、制服など評価が高く、取り入れる国もあった。
アメリカの教育で感じたことは、「自由」「個人」「多様性」「才能の重視」といったことだ。服装、考え方など、すべて自由で、個性的だった。さらに移民の国らしく、生活などすべてで多様性に溢れていた。同時に貧富の差は大きく、親の教育に対する意識も多様で、地域により学力差は大きかった。平均的な学力は日本より遥かに低いと感じた。
日本の教育は勤勉、均一性を売りにしてきた。当然、平均点は高くなる。発展途上国で生産性を上げる流れ作業、品質管理に向いている。上質な労働者を生み出す教育なのだろう。ある程度は成功し、国土は狭く、資源小国でありながら、GDPは世界第2位を長く維持した。しかし現在は、半導体を含め、かつては世界シェアを独占ていた家電も中国はもちろん、韓国、台湾に大きく遅れている。よく言われていることだが、平成元年の世界の株式総額のトップ10企業に日本企業が8社を占めていた。しかし平成30年のトップ10に日本企業は1社も入っていない。GAFAM、アメリカのIT企業が占めている。「空白の30年」だ。バブルの崩壊、経営戦略の停滞とイノベーション不足、グローバル化とデジタル化、IT企業への乗り遅れ、保守的な経営姿勢など、いろいろ言われている。しかし、その根本にあるのは「教育」では、ないでしょうか。
帰国した時、当時のことを書いた本、『アメリカの学校生活』『カリフォルニアのあかねちゃん』を出版した。どちらもアメリカの教育システムに触れている。自由で個人に重点を置いた、多様性あふれる教育システムだ。当時は僕も日本の方が断然優れていると信じていた。しかし、今は─。皆さんと共に考えていきたい。
作家 高嶋哲夫 氏
教育関係の著作 「いじめへの反旗」(集英社文庫)「 アメリカの学校生活」「カリフォルニアのあかねちゃん」「風をつかまえて」「神童」「塾を学校に」「公立学校がなくなる」など多数。
https://takashimatetsuo.jimdofree.com/