
STUDYPLUS AGENDA 2024AW
人口減少とこれからの教育業界。
課題を見据え、共に考える。
いま考えるべき教育と経営の論点
第2回 スタディプラス アジェンダ
2024年6月、スタディプラス株式会社(廣瀬高志代表取締役社長、東京都千代田区)が開催した、第1回スタディプラスアジェンダに大きな反響が寄せられる中、同年11月第2回スタディプラスアジェンダが開催された。5つのセッションを通して、少子化や労働人口の減少を背景に、コロナ禍の中で加速した不登校の増加をはじめインターネットやSNSの普及で鮮明化してきた個性やアイデンティティの多様化などをテーマに様々な事例や情報などを共有した。ダイジェストでご紹介する。
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[Session 1]人口減少時代の本部機能のあり方
宮坂 社員やチューターの採用難が深刻化する一方、各拠点で求められるのは質の高いサービスとそれを提供し続ける高い生産性です。本部は各拠点とどのように連携し運営を行っていくことが理想なのか。スピーカーは(株)湘南ゼミナール横浜翠嵐V・難関高受験コース事業部長 北原剛輔氏と(株)俊英館 俊英館Flex事業本部部長 井上健太氏。湘南ゼミナール様は1988年設立、校舎数は212校(神奈川県175校・千葉県17校・埼玉県18校・東京都2校)。小学生・中学生・高校生を対象に集団授業、個別指導、オンライン授業を通してICTの先駆的な取り組みを展開中です。(株)俊英館様は1984年設立、東京都板橋区を本社に44校(東京都13校・千葉県2校・埼玉県27校・群馬県2校)。小学生・中学生・高校生対象の集団授業・個別指導などでICTツールを積極的に活用中。具体的な事例に触れながら、これからの塾経営についてお話しいただきます。
少子化が与える影響と多様な学びのニーズ
宮坂 中学1年生(12歳)の人口は、2033年にかけてマイナス23%になることが予測されていますが変化はいかがですか。
北原 神奈川は58くらいの市区町村がありますが47くらいが自然減、社会増。お子さんの流入が比較的あるので塾のニーズも多くいただけています。今までですと集団、個別、映像その他いろいろな形態があり、形態別のニーズがあったと思います。私のところは主に集団ですが、集団の中でも「こういう高校に入りたい」という期待に応え選んでいただくコース設定などを考えています。
井上 東京の複数の校舎では、そこまで少子化の影響を受けている印象はありません。弊社は創立当初は集団だけでしたが、ニーズの多様化に応えるために一つの校舎の中で集団指導と個別指導を両立させていく形をとりました。現在は高校生に注力していますが、教える側もノウハウや知識はないため、映像授業を取り入れています。少子化の影響を食い止め、生徒数の上昇にもっていくよう努めています。
多様な学びのニーズを満たすための人とICT
宮坂 日本全体で人手が644万人不足し教育業界では28万人が不足すると言われる「2030年問題」。限られたリソースでどういう指導形態をとっていらっしゃいますか。
北原 コロナ禍のさらに前からオンライン授業に着手し、オンライン授業、対面の集団授業を生徒の状況・学力に応じて使い分けています。ある一定水準以上の授業を、どこの地域であってもより多くの生徒に届けるには、オンライン授業は極めて有効です。
井上 ひと言でいうとICT教材のフル活用です。社員の採用による質の担保はなかなか難しく一定レベルの教えるスキルを身に付けるのも難しい。そこを解消するためにニーズに合わせたICT教材を導入した経緯があります。
本部としての取り組みと組織運営
宮坂 業務の効率化や組織作りについてお聞かせください。
井上 高校部を途中で導入したので、高校生指導とか、大学受験の知識がある社員を集め、群馬・東京・千葉・埼玉までを横断的にサポートするチームを組んでいます。
北原 難関校コースをつくる際、書類づくりから設計まで全部私がやっていましたが、現場でやることをコンパクトでシンプルにし、本部で集約するべきことを集約して効率化。現場と本部でやることを切り分けながら対応する中で、配置や抜擢、育成、得意なことをデジタルでやってもらうなどの業務標準化が整ってきました。
[Session 2]人口減少時代、生徒が長く通い続ける教室づく
宮坂 小・中・高校生を抱える塾においてカギとなるのはいかに継続して通ってもらうか。そしていかに良い人材を採用しサービスの質を維持・向上していくか。スピーカーは(有)日米文化学院 代表取締役 柳田浩靖氏とTASUKE(株)代表取締役﨑山正樹氏。柳田様は日米文化学院において小・中・高校生を対象に集団授業、映像指導(高校)を展開中。﨑山様は大手個別指導塾の教室長を17年間経験したあと、小・中・高校生を対象に千葉県東金市でTASUKE塾を開校。生徒の継続率向上や採用のヒントとなる取り組みを紹介いただきます。
地域の事情と経営戦略
宮坂 中学1年生(12歳)の人口推移(予測値)は2023年から2033年にかけてマイナス23%と言われています。千葉県は37市16町1村で構成されており、市の人口ランキングは八千代市が8位、東金市が26位。地域の変化はいかがですか。
柳田 八千代市の人口は減っておらず増えているところもあります。船橋の学区は偏差値の高いところは高倍率、低いところは定員割れを起こしていますが、コロナ禍以降、公立よりも私立志向が高まっています。「ゆる中学受験」という言葉が出てきましたがトップ層ではなく中堅層で私立受験を考える層が増えています。うちの地域は八千代市と千葉市とさくら市の境にあるのですが、地域性に合わせ一斉指導プラス自立的学習法を取り入れています。
﨑山 2015年に起業しましたが、東金市では大して子どもの数は減っていません。分岐点になったのはコロナ。映像授業を開始しICTにご理解いただいているので生徒数の増減もほとんどありません。
宮坂 経営戦略として地域に合わせてどういったことを考えていらっしゃいますか。
﨑山 塾のスタート時から、成績がミドルより下の子たちを手助けしたいと思っています。テスト的に都内にある教室については個別もやっています。ゴリゴリに個別をやりたいと思っていたのですが、東金については100%映像でしかまわしていません。映像も使い、自立でもどうしてもフォローが必要な場合にはそこだけ個別にしています。
柳田 自立学習塾を立ち上げるにあたって利益確保のために、放課後デイサービスを始めたのですが、保護者の思いもあり大変ニーズがあります。官の後ろ盾があるのも大きいです。
生徒のニーズに合わせた指導形態
宮坂 どういう指導形態でICT教材をどのように使っているかをお聞かせください。
柳田 定期テスト対策をどうすればいいのか悩んでいたときに一斉個別方式というメソッドに出会いました。まだ自立指導という言葉がなかったときにすごいなと。子どもたちがモチベーションを上げていくときに必要なのは他者承認。それを上げていくためのノウハウを実践しています。高校部では全教科を学びたい生徒に合わせて映像指導を導入。小学部は、中学受験以外完全に自立で、プリント教材を組み込んでいます。非受験の子たちは習い事がいっぱいで曜日を固定できないため、曜日をフルオープンにして、17時から19時の間で通塾。そこでプリント教材をやります。中学部は定期テスト対策。各人に合わせてプリント学習に取り組ませます。高校部では対面で行っている英数、高3の現代文以外は、映像を見たあと定着のためのプリント学習を実施しています。
﨑山 弊塾はコンテンツの力を借りて動いている塾です。そのためには、入塾時に映像授業のルールをきちんと教え確認します。映像授業とはいえ、塾に来る時間やコマは予め固定。視聴する授業の内容は当然生徒ごとに異なるので、生徒が来る前に先生が念入りに準備しています。
生徒の離脱の背景・長く通ってもらうための取り組み
宮坂 入試の定員割れ、不登校、長期欠席……。もはや学ぶことが当然と言う中で経営できない中、中高継続の取り組みを聞かせてください。
柳田 年内入試が6割決まるようになり、以前は入塾しなかった層が入塾する。上の層と下の層で大学に進学したい子が継続している傾向にあります。高校継続のために高1・中3の途中からスタディプラスを使っています。講師からのリアクションでモチベートされています。
﨑山 高1からスタディプラスを活用。カルテ機能で生徒情報を共有し継続につなげています。サービス全体の起伏がなく、継続する自然の流れができています。