
AJC(全国学習塾協同組合)森貞孝理事長の最新教育情報 第92回
日本の良さを自信に変えて
「教育立国推進協議会」が超党派で設立されたのは令和3年12月のことであった。
当初国会議員170名、民間の有識者200名ほどで発足し会長は自民党の下村博文氏を立てて、最終的には教育の無償化を目指して各分科会の発表があり、現在まで続いている。超党派という形ではあるが、いわゆる教育関連の議員と、教育関係の現場の教師たちに加えて学習塾やフリースクール、様々なタイプの民間の関係者が集まって議論を交わして3年半が過ぎた。月1回の発表会は当初は文科省や経産省、各行政機関専門家の教育の現状、問題点の洗い出し、そして各分科会での討論の発表などが続いた。
全体として見えてきたのは、日本の教育がいじめ、学級崩壊、不登校など50年にもわたって徐々に行き詰まってきたデータがものすごい数の資料として目の当たりに出てきたこと。そして公的な立場とは別にどのようにしたら是正できるかと真剣に話し合ったことだ。
私の手元にも100冊近くのファイルがある。
A4の用紙で数千ページにも及ぶこれらの内容は下村氏が文科大臣になってから始まった教育再生実行会議の資料も含めて、日本の教育の病巣のいたるところを掘り起こして人目にさらすような感じがする。
参加している教育関係の議員や公教育以外の民間のいろいろなタイプの事業者がいくら教育改革を叫んでも、政治の本筋は大企業や外交など対外的に影響力がある分野が中心になるのだろうと、正直どこまで形になってくるか見えてこなかった。
しかし潮目が変わった。教育の無償化がしっかりと形になってきた。保育の全面無償化が実現し、高校の無償化もじわじわと進んでほぼ完全無償化に近い形が出来てきた。教育立国推進協議会では下村議員のほかにも国民民主党の玉木雄一郎氏のように元財務官僚の発言も多く、自民・公明・維新の三党の合意のもと3人以上の子どもの家庭で大学の授業料の無償化が行われることがほぼ本決まりになった。今までの流れを見ると高校の無償化も、少しずつ所得制限が緩和されて、ほぼ本年から所得制限は撤廃される。数年先には、幼児から大学まで教育の無償化が実現していくのではないか。
少数与党になった政府は野党の力も取り込んで進めていこうとしている。その一つの目玉が少子化対策であり、教育の無償化になっている。
下村氏が文科大臣になって、教育再生実行会議がスタートしてから15年、ここまで新しい教育の動きが進んできている。
大国の武力、腕力によって動かそうとしている世の中を、日本は教育とか、外国人がぜひ日本に行きたい、きれいな道路、素晴らしいトイレや交通網の発展などの技術、魅力的な食と安心できる治安、3600万人を超える外国人観光客の訪日などしっかりとした足場を固めて伸ばしている。そのような形で世界から注目を集めている国はほかにはない。日本の未来は、このようなスキルや環境を活かしていくべきではないか。
改めて日本の良さを自信に変えて、世界をリードできるのではないか。そしてそこでイニシャティプをとるのは教育関係者も含めた底辺の、国民全体の力だろう。
大学の無償化が始まる。貧富の差なくその気にさえなれば教育は受けられる。いい時代が実現するのも近い。自分から積極的に動けば夢や希望は大きく広がるのだ。