(株)市進ホールディングス グローバル社会を見据えた民間学童保育「ナナカラ・クロス」を今春開校
民間学童保育のナナカラを運営する(株)市進ホールディングスは今年の4月、新たにナナカラ・クロスを市川市本八幡に開校した。ナナカラは子どもたちが社会に出てからの基礎・基本となる様々な「体験の場」を提供しているのが大きな特長だが、ナナカラ・クロスはさらにグローバル社会を見据えて、外国人とのコミュニケーションを意識したアフタースクールとなっている。
ナナカラ・クロス(千葉県市川市)
株式会社 市進ホールディングス
社長室付アドバイザー
関口 恵子 氏
あくまで英語はコミュニケーションの道具
ご存じのように文科省は、社会のグローバル化に伴って、小学校での英語教育の充実化を謳っている。その英語を学ぶに当たってナナカラ・クロスでは、特に小学生にとって一番重要なことは、外国人との「コミュニケーションは楽しい」「コミュニケーションしたい」という動機だと考えている。
「例えば子どもたちが将来企業に就職したとき、インド人もシンガポールの人も、どの国の人も英語を喋りますが、英語はあくまで道具にすぎません。それぞれの国の背景にある文化を理解していないと、うまくコミュニケーションはとれないのです」と、市進ホールディングスの社長付アドバイザーである関口恵子氏は言う。
同じくナナカラ・クロスのアドバイザーで、拓殖大学商学部(コミュニケーション論)の教授であり、東京都教育庁の協力を得て推進するグローバル人材を育成するための体験型英語学習施設「TOKYO GLOBAL GATEWAY」の取締役COOに就任された長尾素子氏は、ウェブサイトでナナカラ・クロスの教育的意義についてこう述べる。
「中学・高校へ進学するにつれ、知識や技能は増していきます。『ナナカラ・クロス』で多様な『コミュニケーション』を経験した子どもたちは、知識と技能が『経験』という土壌にしっかりと根を張り、それがさらなる動機となり、『コミュニケーション能力』として大きく育つことと確信します」。
「長尾先生自身、ドイツ銀行で仕事をしていた経験があり、同じ銀行内でみんな英語を喋っているにもかかわらず、なぜこんなにも分かり合えないのだろうと興味を持ち、それでコミュニケーションについて学ばれたという経験を持っています」と、関口氏は語る。
「英語に苦手意識をもつのは、英語を知識として学ぶから」
何よりも英語に対するモチベーションを重視するナナカラ・クロスでは、「ここに来たからといって、英語がペラペラに喋れるようになるわけではありません」と事前に保護者に伝えているという。
「日本人の苦手意識は英語を生きたことばとしてではなく、知識として学ぶことに起因しているのだと私は思っています。海外留学経験者に話を聞くと、ブラジル人やヨーロッパの人々は、文法は日本人より全然できていないけれども、皆さん自信を持って英語を喋るそうです。間違っていても自信を持って喋る。それが英語や他の言語が上達する最大のポイントですから、ナナカラ・クロスではそこを英語教育のコンセプトにしています。結果がすぐに出るわけではないので、そのあたりを保護者に十分説明し、ご理解いただけるように努めています」
具体的には、市進グループの「みらいえインターナショナルスクール」の講師による英語で行う多彩なプログラム。ゲーム、音楽やダンス、アートやクラフトを通してコミュニケーション能力を育んでいく(月2~3回、教材費別途)。
また、市進アスリートであるビーチバレーの藤井桜子選手による講座も行う予定。藤井選手がアメリカのカレッジで2年間バレーボールチームに所属しプレーをしていたときに出会った、アメリカの子どもたちが行っている「キッズトレーニングプログラム」だ。英語を折り込みながら楽しく行うのが主眼で、運動が苦手な子どもも身体を動かすことを楽しめるよう、ゲーム性の高いプログラムにし、運動不足を解消。グループで協力し、スキンシップや会話により、子どもたちのコミュニケーション能力と協調性をアップ。ストレス解消とメンタルコントロールにもつながる(不定期)。
まだナナカラ・クロスは開校して1年目だが、2年目以降は英語劇も年に1回行う予定だ。
「お客さんの前で英語で発言できれば、それが大きな自信になります。例えば外国人に道を尋ねられた時に、自分が知っている英語や会話以外の方法も使い、道を教えようとする姿勢になれればいいなと思っています。大切なのは英語を間違いなく話すことではなく、困っている人に道を教えることですから」
企画参加を子どもに強制しないのが、ナナカラのコンセプト
このほか異文化体験として、市進グループの日本語学校「江戸カルチャー」の留学生と一緒に映像で海外をリアルに体験したり、遊びやモノづくりを通して外国を身近に感じたり、日本文化の真髄である茶道、華道、書道を通して「丁寧に自分と向き合う時間を持つ」など様々な体験学習が用意されているが、その参加は「決して強制しない」ということも、ナナカラの大きな特長だ。
「その時々の気持ちや気分によってやりたくないときがあるのも当たり前。それを強制して嫌いになってしまったら、本末転倒です。どんな企画でも一応声はかけて勧めますが、最終的にはお子さんの意志を尊重しています」と関口氏は語る。
「あくまでナナカラは学童保育。お子さんが選んで来ているのではなく、親の都合で来ていることを保護者も私たちスタッフも忘れてはいけません。学校だって行きたくないときもあるのですから、学童にも行きたくなくなってしまったらお子さんはつらいです。学校で嫌なことがあってもナナカラの友だちと遊んだら気が紛れるなど、お子さんがほっとできて居心地のいい場所でなければいけません」
そう語る関口氏自身、仕事を続けながら子育てをし、学童保育も活用してきたワーキングマザーだ。自らの子育て体験も当然のことながらナナカラの企画には活かされている。
「子どもが集まればちょっとしたケンカや小競り合いが起きるのは当たり前のこと。その中で何が悪かったのかを見極め、『ごめんね』と謝れるようになることもコミュニケーションにおいてはとても大事なことです。そういう意味ではケンカも大切な経験と言えます」
スタッフの研修を行ったり、保護者やナナカラのスタッフの相談にのってアドバイスをしてくれるのは、田辺悦子氏。
「田辺先生は長年保育園の園長をなさっていた方で、当初からナナカラに関わっていただいています。第三者として保護者の相談に乗っていただいたり、トラブルが起きた時など保護者面談に入っていただいたり、私たちナナカラのスタッフにとっても強力なサポーターになっていただいています」
市進グループであることの強みを活かし、2年目、3年目とナナカラ・クロスがどんなアフタースクールになっていくのか、さらに楽しみな取材となった。